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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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sakura

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アクアマリン色のマニキュア


「ベットに横になって」
 さくらは明に言った。明は身にまとったばかりのバスローブを脱いだ。
「照明落として」
 さすがに明はさくらに全身を触られることに、恥ずかしさを感じるというか、老いの引け目だろう、張りのない肌を見せたくはなかった。浴室ではそんな感情よりも、さくらの裸体ばかりに、明は欲望を感じていたから、自分のことは考えるゆとりもなかったことになる。
 売り手と買い手、明はさくらの身体を自由にできる対価を渡したと思っていたから、どんな自分をさらしたところで、さくらは受け止めるはずだと、浴室では思っていたのかもしれない。だが、今の明は、さくらに印象の良い自分の姿を,さくらに好きと言う感情を抱かせたいと、思い始めたのかもしれない。 
「脂肪が多いようね」
「腹が出すぎかな」
「運動したほうがいいわね」
「朝と夕方には犬の散歩を30分はしていますよ」
「犬が好きなんですね。どんな犬です」
「トイプードルとゴールデンレトリバーですよ」
「いいな。私も犬が好きで、実家の四国では紀州犬を飼っていたんですよ」
「生まれは四国なんだ」
「大学の進学で関東に来たんです」
 さくらのマッサージで明は眠くなっていた。
 さくらのマニキュアが薄暗い部屋にまるで熱帯魚が泳いでいるように、明の眠気を誘っていた。アクワアマリンの海の中に明は潜り込んでいくような気分であった。
「少し眠りたい。12時に起こして」
「はい」
 さくらは携帯にアラームを設定した。
 さくらは全裸になり明の横に体を横たえた。
 
作品名:sakura 作家名:吉葉ひろし