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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに

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 桧垣の方も残念に思いながらも、無理に誘うことはしない。心理学を専門に教える彼は、恵美莉の心理をうまくコントロールすると共に、また次のチャンスを伺うのだった。お互いこうすることで、二人は安心の距離を保ち、関係は安定していた。
「そうか、じゃ僕は研究室に戻るから、後片付けして鍵を学生課に返しておいて」
「はい、お疲れさまでした先生」
そうしてまた抱き合って、さっきより濃厚に絡み合う二人だった。

     ・
     ・
     ・

 春樹の部屋に戻る前、スーパーで買い物をする恵美莉は、
(なんか晩御飯作るの面倒になっちゃったな)
さっきまで一緒にいた桧垣のことを考えながら、ニヤケ顔になるのをこらえていた。
 一通り店内を回ったが、結局『20%引き』のシールが貼られた牛丼を一つ買って、春樹のワンルームに向かった。

 ♪ピンポーン   カチャカチャ・ガチャン

「ただいま」
「おかえり」
 恵美莉が部屋に入ると、春樹は机に向って、ピンセットでプラモを組み立てていた。その様子をリビングの入り口で見た恵美莉は、
「牛丼買って来たよ」
「ああ、ありがと。あとで食うよ」
「どうせ昨日から、ろくなもん食べてないでしょ」
キッチンに捨てられたスナック菓子の袋を見ながら言った。
「じゃ、チンして食べてね」
「え? 恵美ちゃんは食べないの?」
「うん、今日はもう、家に帰って食べる」
「そう、じゃまた連絡するよ」
「うそ。プラモに熱中してたら連絡なんかして来ないわよね」
「ははは、そうかも」
「今日も徹夜すんの?」
「うん、でも組み立て終わったら、色付けの乾き待ちで、ちょっとずつ寝れるから」
「いつ完成する予定?」