EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに
第2章: 金曜日の出来事
翌日の金曜日、春樹は二日連続で大学を休んだ。自宅から通学している恵美莉は、一日のカリキュラムに空き時間があると時間を持て余す。みのりがいれば暇つぶしできるのだが、この時みのりには授業があった。
そんな時は、
♪ピンポーン カチャカチャ・ガチャン
恵美莉は呼び鈴を一回押した後、合鍵でドアの鍵を開けた。返事がなくとも勝手に入れるこの部屋は、一人暮らしを始めた春樹のワンルームである。
「いるんでしょ。今日もズル休みする気?」
と言葉を遠くに投げかけながら、玄関キッチンとリビングの間のドアを開けると、
「うヴぇ!」
いつものシンナーの匂いがして、言葉を詰まらせた。
「ちょっと、換気しないと体に悪いよ」
「ああ、寒いから」
「暖房付けてるじゃない。寝てたの?」
ベッドに横になっていた春樹は、首だけ持ち上げて恵美莉を迎えた。
「うん。今、下地塗りが乾くの待ってた」
「授業は今日も出ない気?」
床に広げられたバラバラのガンダムをまたぎながら、座る場所を探すがスペースがなく、ベッドに正座した。
「日曜が締め切りだから、それまで何とか完成させて、店に持ち込むんだ」
「コンクールに出すの? そんなに急ぐならもっと早く作ればいいのに」
「この新発売モデルで出展することに、意味があるんじゃないか」
「ああ、そうか。それで得点変わんのかな?」
「絶対優勝」
「もうどれくらい進んでるの?」
「見ての通り、部品ばらして面取りして下地塗り終えたとこ」
「昨日から作ってるんでしょ」
「ああ、夕方から寝ないでやってる」
「20時間近くもやりっぱなし?」
「そう」
「ちょっとは寝なよ」
恵美莉はあきれ顔で言うと、
作品名:EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに 作家名:亨利(ヘンリー)