EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに
電車はもう、大学の最寄り駅に到着しそうだ。恵美莉はコートの襟に、すっぽりと顎をうずめた状態で、向かいの窓の景色を見た。その時、コートの中の自分の匂いに気付いた。それは西野刑事が付けていたコロンの匂いだった。
(シャワー借りればよかった。春樹君が寝てる間に、こっそりシャワー浴びなくちゃ。それで全部誤魔化せるかなぁ? やっぱり行きにくいなぁ)
恵美莉は自分が、結構ヤバイ橋を渡ろうとしてることを認識した。
駅に着いて、春樹のワンルームマンションに向かう前に、コンビニでパンをいくつか買った。そしてその支払いの最中にスマホのバイブがうなった。
(ヒデキさん? 春樹君? どっち?)
そう思って、店を出てすぐ確認すると、
SMS
ヒデキさん
09011XX56XX
[朝帰りか?やるな]
20XX/12/10 7:18
(そりゃそう思うでしょうね。昨日はその気もないのに、羽を伸ばすとかって言っちゃってたもん)
[早いですね。
もう起きてるんですか?]
✓20XX/12/10 7:19
[まだ寝てないんだ。
それよりそっちはどうしてた?]
20XX/12/10 7:20
[聞きたいですか?]
✓20XX/12/10 7:20
[電話してもいいか?]
20XX/12/10 7:20
[OKです]
✓20XX/12/10 7:21
作品名:EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに 作家名:亨利(ヘンリー)