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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに

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第1章: 木曜日の出来事



 春樹は宣言通り、木曜の授業をサボった。
「菅生君休み?」
 大学のキャンパスを一人で歩く恵美莉に、同じ学科の河辺みのりが駆け寄って来た。
「来てないわ。卒業の単位は足りてるからって、あいつまたプラモ屋に並んでんのよ」
恵美莉はカバンを右から左の肩に掛け替えて、みのりと並んで歩きだした。
「そうまでしてオモチャ買う?」
「プラモは人生そのものらしいわよ」
「どこが?」
「いっぱい聞かされたけど忘れた。国宝級を作るんだってさ」
「じゃ、売っちゃいなよ」
「そんなことしたら殺されるよ。プラモだけは真剣なんだ。部屋もプラモグッズばっかりなんだから」
「そこ入居して、まだ1ヶ月じゃなかった?」
「そうなのよ! なのにもうシンナーの匂いがして、やばいヤツの部屋みたいだもん」
「へへへへへ、ラブホ代が浮くって喜んでたのに」
「変な臭いの中でするのも案外イケルのよ」
「何? イケルとか、ホント好きねぇ」
「そう言うイケルじゃないって!」
恵美莉はカバンを、みのりのいる右側にかけ戻して、少し早足になった。
「ああ、待ってよ。明日どうすんの?」
「え? 明日?」
恵美莉は立ち止った。
「うーん。やっぱり忘れてた。最近忙しいもんね。夜の恵美莉は」
「あ、ゴメン。忘れてた! 明日はー・・・あああああ」
みのりはがっかりした顔になって、恵美莉から目を逸らした。
「・・・あああ、怒んないで」
「もういいよ。いっつも私にはチャンスなんかないんだから」
「ゴメンみのりー、今から確認してみるから」
 恵美莉は小学校時代からの大親友、井上奈美が秋から付き合い始めた相手の仕事仲間たちとも仲良くなっていて、合コンしようと誘われており、みのりに声をかけていた日が金曜の晩だった。しかし、その後すっかりその予定を忘れてしまっており、相手側に連絡していなかったのだ。
 恵美莉はすぐに電話を掛けた。
「・・・もしもし? 奈美。明日の晩、合コンしようって言ってたの覚えてる?・・・・・・うんうん・・・そう・・・・・・やっぱり?・・・今からじゃダメかな?」