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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに

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プロローグ



「木曜日に新作が出るんだ」
「またプラモのこと?」
「そう、ユニコーンガンダムの1/60スケール、大迫力のやつ」

 菅生春樹はスマホ片手に、プラモデラーのホームページを開きながら、目を輝かせて話している。そんなどうでもいい話を、横で調子を合わせながら聞いているのは、川崎恵美莉である。
 学食でランチを済ませ、何もすることがない二人は、食べ終わった食器が載ったトレーを前に、なんとなくそのままの席でしゃべっていた。

「また徹夜で作るの?」
 恵美莉は少し呆れ気味。だが春樹のプラモ作りはもう趣味のレベルではなく、コンクールで優勝出来るほどの腕前で、ガンプラ業界に新しい旋風を巻き起こしている。
「今回の塗装はね、ちょっと変わったことに挑戦しようと思うんだ」
「知ってるよ、もう。普通に塗るだけじゃなくって、汚れが着いたみたいに塗るんでしょ」
「そんなんじゃないよ。三次元のプラモに二次元塗装をやってみる」
「それ、どういうこと?」
「ふふふ、立体モデルにエイジング塗装して、リアルな戦闘後の雰囲気を出すのは誰でもやってるから・・・」
「ふうん」
恵美莉はそれほど真面目に聞いていない。
「アニメの作画を参考に、立体にアニメ画の色付けをしてやろうと思うんだ」
「どう違うのよ」
「つまり汚れじゃなくて、光沢と影まで塗装するんだよ」
「それ、スゴイことなの?」
「ものすごく面白い挑戦だと思うんだ。だってアニメのロボットに付けてる影は、躍動感を演出するために、不自然なほど描き込まれることがあるんだよ」
「そんなに興奮しないでよ」
「木曜は、朝から授業休むからな」
「また、代わりに出席カード出しとけってことね、あーぁめんどい」

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