EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに
>菅生春樹
既読 [今日はご飯食べた?]
17:45 [ちゃんと寝てね。おやすみ]
すぐに既読になったが、返信はない。
(よし。これで何かあっても、電話じゃなくLINEが来るはず)
春樹は自分に用事がある時しか、LINEもほとんどしてこない性格だった。そんな春樹の性格を恵美莉は完全に把握しきっていた。ほんの少しのメッセージも返信して来ないのはいつものこと。
(もし返事が来ても、既読にしないで、「もう寝てると思ってた」ってことにしよ)
「何してんのよ恵美莉!」
「ああ、ちょっとLINE」
「菅生君に連絡? 合コンよ! これから合コン!」
「分かってるって、これで自由の身になったから」
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「うわっ! しまった」
春樹が突然声を上げた。左手にガンダムを掴み、その足に面相筆を当てて影を付けている最中に、事もあろうかコックリしてしまったのだ。
「お、俺としたことが・・・」
グレーの影用の塗料が、全然関係ないボディにべっちょりと付いてしまっている。
(あああ、何とか誤魔化せないかな。あーん。ダメだな。正面に影が出来るはずがない)
「仕方ない。塗り直しだ。春樹、行きま~す!」
時間は20時を回っている。春樹は恵美莉がどこで何をしているのかなど、まったく気にしていない。みのりとカラオケに行っているくらいにしか、考えていないのだった。かえって、その方がプラモ作りに没頭したい春樹にとっては、好都合だというわけだが・・・。
(さすがに3徹夜目はきついな。明日、本店に持って行かなきゃならないし、日が変わるまでには完成させないと)
作品名:EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに 作家名:亨利(ヘンリー)