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生と死のジレンマ

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 矢久保の死体が発見されたのは、それから二年が経っていた。バラックは相変わらず存在していて、混乱した時代にいつ終わりがくるのか分からないような迷走している時期であったが、矢久保の死体は、矢久保の家から防空壕までの間の道で見つかった。掘り起こしたことで分かったことだが、ほとんど骸骨かしていたが、来ている服の名前や所持品から、矢久保だと確定された。
 それが、本当の矢久保なのかドッペルゲンガーなのか分からない。矢久保の身内は皆死んでいて、引き取りては、捜索願を出した典子に委ねられた。
 典子は、矢久保の骨を引き取り、矢久保家の墓に入れてあげたが、それからというもの、典子の姿を見たものは誰もいなかった。典子は自分が生き残るために、緊急避難のような形で矢久保を葬ってしまったのだ。そもそも骨を引き取りに行った典子も、一言も口を開かなかったという。いわゆるドッペルゲンガーと同じであった。
 矢久保を殺してしまった典子は、それ以降、生と死の狭間のジレンマを彷徨っていたのかも知れない……。

                  (  完  )




作品名:生と死のジレンマ 作家名:森本晃次