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58の幻夢

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16.微酔遊戯



 妻を亡くした私を気遣って、会社の有志がパーティを開いてくれた。

 会費で購入した酒肴を、終業後に会議室で飲み食いするだけの催し。しかし、あまり飲み会など行わない社風だったからか、この小さな会社のほぼ全社員が参加し、それなりに話に花が咲いていた。

 そして、宴もたけなわになった頃、唐突に誰かがフルーツバスケットをしようと言い出した。
 フルーツバスケット――車座にイスを配置し、中央に立つ鬼の言葉に当てはまる者が席を立つ遊戯。主に子供、最近は介護施設等でも行うらしいが、あまり社会人がやるものではないだろう。提案は却下されるかと思ったが、意外にも参加者の大半が乗り気になった。すかさず机が隅によせられ、参加人数より一つ少ないイスが円形に配置される。

「まずは、入社して3年以下の人で」

「じゃあ、人事部と総務部のひとー」

「んー、今日半そでの人!」

「今月、遅刻したひとっ」

久々にやったせいだろうか、存外に面白い。アルコールの力も加わって、さらに遊戯はエスカレートしていった。


「童貞または処女のひとー」
あれは、新人の島田君だな。確かにちょっと見た目、女に縁なさそうだもんなあ。俺もやもめになっちゃったし、機会があったらソープにでも連れてってやっかなあ。

 鬼は島田君。
「実は同性愛者の人!」
あー、黒柳部長。でもいまだに独身だったし、なんか変な目で見てくるし、言われてみれば思い当たるふしがあったなあ。

 鬼は黒柳部長。
「風俗で働いてた奴いるだろ」
経理の大宮さんだ。いつもまじめだし、おしとやかだし、そんな風に見えなかったけど。社長の奥さん? 「あたしも若い頃はブイブイ言わせてたのよ」って。……社長、笑ってるけど知ってたんかな。知ってたんだろうなあ。

 鬼は社長の奥さん。
「カツラをしている方、お立ちなさい」
ああ、小野課長だ。みんなも噂してたからねえ。って黒柳部長も? 部長はわかんなかったな。値段が高いとバレにくいとかやっぱあんのかな。

 鬼は小野課長。
「トイレで手を洗わない人」
えっ、大宮さんほんとに? うわ、なんか風俗よりショックだ。あ、島田君も。うん。まあ、彼はわからなくもないか。

 鬼は大宮さん。
「赤ちゃんプレイが好きな人、でお願いします」
ずいぶんマニアックだな、って社長! マジっすかー。黒柳部長も? つうか部長、ゲイでヅラで赤ちゃんプレイって、なんかもう逆にすごいっすね。

鬼は社長。
「奥さん殺した奴」
思わず立ち上がっていた。


作品名:58の幻夢 作家名:六色塔