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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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その時、僕は目を覚ました。自分が見ていた夢に驚かされ、そして今度は目を開けて、「夢だったのか」という思いに驚かされた。


でも、これは数週間前に本当にあったことだ。


もう、ヴィヴィアンは帰ってこない。僕は新しく用意された家でその時の闘いの夢から目覚め、うっすらと体中に嫌な汗をかいているのを感じた。

気が付くと、暖炉の火が消えている。部屋は寒かったけど、僕は体を温めたいとは思えず、まざまざと蘇る彼女の死に際の悪夢に息を切らしていた。


「はあ…」

大きく息をついて、目の前を見る。テーブルの上のサンドイッチは、パサパサに乾いてしまっていた。それをちょっとの間見ていたけど、僕はすぐに目を背ける。

近頃はあまり食欲も無い。でも僕は闘いをやめるわけにはいかないから、気が進まなくても食事はした。


「お兄様」


声がした方を振り返ると、うちでメイドさんとして働いてくれている女性が立っていた。

それは、議事堂で働いていた、僕にタカシを抱かせてくれた、あの女性だった。

彼女は僕を優しく気遣う様子で悲しそうな顔をして、居間の戸口に立っている。僕はその美しい姿に、前のように胸がドキドキして堪らないということはなかった。


死を目の当たりにした「あの戦場」で、僕は変わった。でも、ときめきすら忘れるほど疲れてしまっていた僕の心に、彼女が懸命に寄り添おうとしてくれていることへの、静かな感謝が確かにあった。


「大丈夫、食べるよ」


彼女はそれを聴くと、「夢見が悪かったようですから…温かいお茶を支度しますね」と言った。

「ありがとう、お願いするよ」



僕は一人住まいの屋敷に、メイドさんを一人付けられて暮らしている。日々の買い物や家の中の掃除や、料理、後片付けなど、すべてを彼女がしてくれていた。


そうやって毎日が過ぎてゆく中、僕はまだ「あの日」に立ったままだった。

それを彼女も分かってくれているのか、彼女は時たま、悲しそうに僕を見つめ、「お兄様」とだけ僕を呼んだ。

それはまるで、悲しみから抜け出せない僕を呼んでいるような声だった。