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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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「ハルキ様は、お兄様と会うわけにはいかないと、わたくしに一言告げ、タカシ様の口を閉じてしまわれました」

僕はその日、議事堂の応接間に呼び出されて、オズワルドさんにそう聞かされた。

それは、「ハルキ様からのお返事を賜りました。早急においでください」という書きつけが、軍に届いた日だ。

僕はもちろん兵長に断って、すぐに兵舎を出た。でも、議事堂の応接間に通されて会ったオズワルドさんは、「もしかしたら、我々の予想通りかもしれません」と口にしたのだ。

僕たちは向い合せに腰掛け、オズワルドさんは、春喜に聞いたことの返事を伝えてくれた。


春喜は、僕に会ってくれない。僕はこの世界の進みを春喜から確かめることは出来なくなった。オズワルドさんは更に話を続ける。


「それから…ハルキ様はこうも仰いました。「数々の功績を認め、軍の兵士の頂点と立つべく」、お兄様である貴方様に、「新しい一人住まいの宿舎を与えよ」と…」

「え…?」

僕はいきなりそんなことを言われたので、どうして春喜がそう言ったのかわからなかった。でも、オズワルドさんがすぐに説明してくれた。彼は身振り手振りをまじえて、真剣に僕の目を見る。

「もしかしたら、ハルキ様は貴方様が自分の秘密を知ったことを恐れて、それを周りに喧伝するようなことをやめさせようとしているのかもしれません。あるいはそれは、ハルキ様の中にいらっしゃる神の意志であるかも…」

「我々が真相に近づくのを拒否し、さらに集団で考慮することをやめさせるために、貴方様を孤立させようと思われた…。神は、邪魔をされずに一人でこの世界を統べることとした…。その可能性は否定出来ません。しかし、貴方様は先の闘いで、偉業とも言うべきことをなされた…本当に、その勲功に対しての、ハルキ様からの褒美であるだけなら、よいのですが…」

「そんな…では僕は、軍から引き離されて、春喜とも会えないのですか…?」

僕は途方に暮れる思いだった。オズワルドさんは額に手を当てて困り果てたように首を振る。

「ハルキ様がお会いにならないと決めた者は、あの門を開けることが出来ないのです…そして今まで、ハルキ様の仰ることに背けば、いつもよからぬことになったのは確かです…」

「よからぬことって…」

オズワルドさんは言うのを躊躇していたけど、僕はもう一度、「どうなったのですか?」と聞いた。

「ハルキ様がお怒りになって言い聞かせても、なおも背いた者は、たいてい悲惨な死を遂げています…ちょうど昨日、馬車に轢かれて一人が死にました…。貴方様もお会いになりました、副議長のアイヴァン・ガルビンです…」

「えっ…」

もしかして、「お兄様を議長に」と言っていた、あの人だろうか。いや、あの人に違いない。

僕はその時、凍るような寒気がして、「おそろしいことが起き始めている」と感じた。オズワルドさんは前を向いて顔を上げ、僕を見つめる。


「この世界は、ハルキ様のお力無しには維持出来ないでしょう。しかし、ハルキ様の中の神になんらかの目的があったとして、我々はその答えを求めることは出来ません。しかし我々が考えるようにこれが“試練”であるとするなら、必ず方法はあるはずです」

僕はそれを聴きながら、「本当にそんなものがあるのだろうか」と感じていた。僕はそのまま、何も見えない闇に放り込まれた気分で応接間を出て、兵舎へと帰って行った。