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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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Episode.17 今日の誓い






僕たちは街中を駆け回り、街の外に出る門の近くや、林の中までアイモを探しに行った。

でも、アイモはどこにも居なかった。そして「探し終わったらここに集まろう」と決めたところに全員が集まった。

「居た!?」

「いいや、どこにも居ねえ」

「どこに行っちゃったんだろう、アイモ…」

「とにかく、一度兵舎に戻ろう」

「そうですね…」

僕たちが集まっていたのは、街中から少しだけ外れた、石組みの小高い展望台のような場所だった。ここからは街が見渡せるし、街のいろんな道に通じている。

僕たちは一旦軍へ戻って、アイモが帰っていないか確かめようと話し合いながら歩いた。



「あれ…そういえば、町外れの方は誰か探しましたか?」

吹雪がそう言うと、全員首を振った。そうだ。そういえば街の外れは「行くはずもない」と思って、誰も探していなかった。

「そうだ、もしかしたらそこに居るかもしれないぜ、行ってみよう」

「そうだね、もしかすると…」

僕たちはそのまま展望台を降りてから、人のほとんど居ない町外れの裏通りへ入り込んでいった。




「アイモー!」

「アイモ!いたら返事してくれ!」

道々みんなでアイモの姿を探し、名前を呼びながら歩く。アイモがそんなところに居るとも思えないから、寂れた居酒屋、流行っているとも思えない料理屋などはただ通り過ぎた。

アイモが好きそうな、彼が腰を落ち着けそうな場所を探したけど、うらぶれた影の漂う小路にそんな場所はなく、僕たちはついに、墓場に続く寒い寒い道に出た。



「まさか、こんなところに居るとも思えないけど…」

「まあ見るだけ見て帰ろう。入口からは大体全部が見える」

ロジャーはそう言ってずんずん墓場の門に向かって歩き出した。僕たちが彼に遅れてついていっている時、門の入口まで辿り着いた彼は、「あっ!」と叫ぶ。

「居たぜ!」

そう言って振り向いたロジャーの元にみんな駆け寄り、そのまま全員で門扉を開けて中へと入った。

僕が目で探すと、一面が列になった墓石で埋め尽くされた中、真ん中あたりにアイモが地面に座り込んで膝を抱えているのが見えた。

みんながアイモに駆け寄ると、アイモはあるお墓の前に座っていたのが分かった。それは、アイモのファミリーネーム、「クッコラ」の名が刻まれて二つ並んだ、アイモの両親のお墓だった。

アイモはみんなが駆け寄ってきてもびたりと動かず、口を結んで墓石をじっと睨んでいた。

「アイモ…」

吹雪がアイモに近寄ろうとする。振り向かず、アイモはこう言った。


「僕、復讐、やめるよ」


アイモがそう言った声はとても落ち着いていたけど、決して小さくはなかった。アイモはそれから、全員に聴こえるように少し大きな声で、僕たちに背を向けたまま喋り出した。

「僕は…今日まで復讐するために闘ってた。でも、それじゃもしかしたら、みんなを守れないかもしれない。この間は、運が良かっただけかもしれない…」

僕たちは驚いていた。ほんの七歳のアイモが、そんなに先を見据えてそのことを考えていたなんて、思いもよらなかったからだ。

動揺しているみんなに向かってアイモは立ち上がり、体を向い合せる。

すっくと立ったアイモは、前より一回りも大きく見えて、可憐で気弱だった目は、凛とした勇気を確かに持っていた。


「みんなのために闘う。必ず守る。そう決めたから、報告に来たんだ。ママと、パパに」


吹雪さんは、アイモの言葉に必死に涙を堪えていた。ロジャーはじっとアイモを見つめていたけど、見つめ返すアイモの目は揺るがない。それでロジャーは深く息を吸った。

「安心しろよ、アイモ。俺たちはヤワじゃねえ。みんなで、お前だって守るぜ。一緒に闘ってるんだからな」

「そうだ、必ず守る」

ジョンもそう言って頷く。

「約束するよ、アイモ」

そして全員が、アイモの周りに寄り添った。





僕たちはそれから、「帰ろう」と言ってそこを立ち去ったアイモについて兵舎に帰った。

兵長からのお小言に「すみませんでした」と頭を下げるアイモの横で、僕たちも同じように頭を下げる。

「この間に敵襲があったらどうするつもりだったんだ。以後、慎むように」

兵長は厳しい目をしてはいたけど、怒鳴りはしなかった。

「はい」

アイモはただそうやって返事をしただけだけど、その目を見て何かを感じ取ったのか、兵長はすぐに、「下がって良し」と言った。



僕たちは兵長室を出て、待機室に戻る。みんな、どこか緊張した面持ちだった。

前を歩くアイモの背中を全員が見ている。すると、アイモが立ち止まった。

「…おなかすいた…」

その声の頼りなさは、元のアイモだった。それで僕たちは少しほっとした。

ロジャーが嬉しそうな顔をしてアイモに近寄り、「俺の部屋に来いよ、昨日二班の連中が干し肉とパンをよこしたから」と言って、アイモの背中を押す。

「本当!?」

「ああ、いいぜ」

アイモは元気よくロジャーについていく。ロジャーは「お前らも来いよ。肉とパンはたんとある」と言い、それから僕たちは部屋で話をしながら、パンと干し肉をかじった。