僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)
それから僕たちは洪水のような急な鉄砲水、飛んでくる岩などに道を阻まれて、なかなか進むことが出来なかった。
何しろ、それらをいつも放っていたモンスターは居ないのに、そんなことが起こるのだ。
辺りにはモンスターが闊歩する地響きも無い。
でも僕たちは緊張し、感覚を研ぎ澄ませて目を走らせ、慎重に森の中を進んでいた。すると、行く手に兵長が何かを見つける。
「あれは…青い炎だ!」
僕たちは一斉に前を見て、目を凝らした。確かに、遠くに青い炎のようなものが見える。
それは森を抜けた木の根元に揺らめいているらしかった。イワンが初めに言ったことと同じだ。
「慎重に進め!おそらくここが一番危険だ!」
僕たちにはもう分かっていた。
あの炎や鉄砲水などは、多分、春喜が作っていた仕掛けだ。モンスターを自分から遠ざけておくために。
だったら、この先が一番厳しい道だろう。実際に近づいていくのだから。するとそこで、兵長がこう言う。
「あれは多分ハルキ様だろう。見つかったなら、遠慮をすることはない。何かが来たら、迷わず別の次元へと送れ」
「…はい」
最後に襲い来たのは、「重さ」だった。でも、重い「物」ではない。
僕たちは感じていた。一足一足進むたびに、体が重くなる。
「どうなってんだよ、これ…」
「…重力だろう…もしかしたら、進むのは難しいかもしない。アイモ」
「はい、やってみます」
アイモが頷いて、全員を持ち上げようとした。タカシは苦しそうに地面に踏ん張っている。
ふわっと僕たちは浮いて、アイモがうめき声を上げた。
「すごい…!重いよ…!」
青い炎が迫るほど、アイモは苦しそうにしていた。
「も…もう無理…かも…!」
炎の形が近くなり、森を抜けた僕たちは、視界に収まり切らないほどの荘厳な巨木の下で眠っている、春喜を見た。
「春喜!」
「だめだ!これ以上無理!」
アイモがそう叫んで僕たち全員を放り投げると、僕たちはその場にどさっと落ちる。でも不思議と、もう重みはもう感じなかった。僕は春喜の目の前に落とされて、タカシは喜んで春喜の元へと駆けて行った。
「タカシ!」
僕は思わず叫んだ。もし今の春喜に触れたら、タカシといえども危険かもしれないからだ。
でも、予想に反してタカシは春喜の炎に触れたあと、炎の周りを回り出す。
「あれ…?」
それは炎ではなかった。僕はおそるおそる炎に包まれているように見える春喜に近寄り触れてみる。
「あっ…!」
僕の後ろから兵長も手を伸ばして青いものに触れ、驚いて手を引っ込めた。
「凍っている…!」
作品名:僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結) 作家名:桐生甘太郎