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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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僕たちはタカシを先頭に歩いて、何度も違う次元へと移って行った。その間に、僕は少しずつ、次元の遠さや近さを測れるようになり、その結果、自分たちの元居た世界に近い場所に移って、水や食料を補給することが出来た。

別の次元に転移する時には、全員がロザリーナの持つ手鏡を覗き込んで、僕が右手をかざす。そこに着いたらタカシの反応を見て、その次元をイワンが透視しながら、春喜を探す。

そうしてくるりくるりと回る世界の中を、僕たちは旅していった。




どうして見つからないんだ。


そんな苛立ちが、全員の間に広がっていた。

ロジャーはカリカリして、ロザリーナとアイモはふさぎこみがちになり、ジョンは黙りこくって、兵長でさえ苛立ちを隠せない時もあった。

数限りなく存在する次元を一つ一つ、人間一人だけを探しに移動していく。

それは途方もない、それこそ永遠の時間が必要なことだ。僕は後悔した。


こんなことに、いつまでもみんなを巻き込んでいていいのだろうか?それより、人々を元の世界に全員移して、僕は弟のことを諦めればいいんじゃないだろうか?


そう思うたびに、最後に見た春喜の悲しそうな、悔しそうな顔が浮かんで、僕の頭を離れなかった。





ある次元に移った時、それは起きた。

僕たちが辿り着いた場所は森の中で、それこそモンスターだらけだった。

「あぶない!」

まず初めにアイモがそう叫び、全員が降り掛かってきたモンスターの鉤爪を避けた。

「運が悪かったな!俺は今、虫の居所が悪いんだぜ!」

ロジャーがそう叫び、そこら中を埋め尽くすモンスターを焼いた。久しぶりに彼の目が、赤い熱に燃える。

「やっとおでましだな」

こちらに向かってくる分を、兵長は挙げた片手でぴたりと止めて、それをジョンが切り裂いた。

アイモはあとからあとからやってくるモンスターを持ち上げておいて、間を持たせる。久しぶりの闘いだった。

「いってえなこんちきしょう!お返しだ!」






闘いが終わる頃には、全員がへとへとになっていた。僕たちは体はくたびれ、ロジャーとアイモは少し怪我をしていたので、ロザリーナの手当てを受けていた。

「大丈夫?もうすぐ終わるから…」

「大丈夫。痛くなくなってきたよ。ありがとう」

「良かった…」

もし戦闘になったら、僕とイワンはロジャーの足元でタカシを抱きかかえるようにと言われていた。

僕が違う次元へモンスターを送ったとして、そこに僕たちが辿り着いてもう一度相手をすることになると面倒だと、兵長から言われたからだ。

僕の腕の中に居たタカシは怯えていたけど、僕がずっと撫でてやっていると、少し落ち着いたようだった。それから僕たちは集まって話を始める。


「ここがもしあんちゃんが奴らを送っていた場所なら、ハルキ様が飛んだのもここだってことも考えられるぜ。転移させるのにやりやすい場所ってことだろ?それなら自分を送るのも同じかもしれない」

「それはそうかもしれないが、あえてこんな危険な場所を選ぶか?それに、俺たちが初めに飛んだ場所はここじゃないじゃないか」

「そりゃあそうだが…でも、危険な場所でもハルキ様はかまわないと思うぜ。何せ、誰も近づけない防御壁を張れるんだからな」

「うーん…」

ロジャーとジョンはそう話している。兵長は黙ってそれを聴いていた。

「あんちゃんよ、タカシ様の様子はどうだ?」

そう聞かれて僕はタカシを見たが、タカシは僕の膝の上で眠ってしまっていた。

「眠っているので、どうとも…」

「ザミョートフ、透視を始めてくれ」

「了解しました」

イワンは数限りなく異次元の様子を透視したので、もう目を開けたまま透視が出来るようになっていた。

「とにかく、いつも通りに少し探してみよう。警戒を怠るなよ」

兵長がそう言うので、僕は寝ているタカシを抱いて、僕たちは森の中を歩き出した。





それから僕たちは、あてどもなくその森を歩き、モンスターたちはその中に潜んで僕たちを見つけては襲い掛かってきた。

すべてをかわすのは難しく、全員に濃い疲労が表れ始める。

「広い森だな。しかも襲ってくる奴らばかりだ。もう勘弁してほしいところだ」

ジョンがそうこぼした時、けもの道の脇から、いきなり炎が飛び込んできた。

「きゃあっ!?」

ロザリーナさんがびっくりして、慌ててアイモを抱える。僕は急いで右手をかざし、吸い込まれていく炎を別の次元へと送った。そして、その主をロジャーとジョン、兵長が必死に探す。

でも、モンスターはどこにも居なかった。

「なんでだよ!?なんで何も居ないのにこんなことが!?」

「あんちゃん!何も居ないぜ!」

僕がくたびれる頃、やっと炎は止んだけど、ドラゴンらしきものも見えず、炎の正体は分からなかった。

でもそこで、イワンが突然叫ぶ。

「居た!居ました!」

彼は興奮して遠くに向かって視線を浮かせていた。僕たちは全員その方向を見る。

「ザミョートフ、間違いないのか」

「ええ。必ずここに居ます。この森の奥だと思います。」

「よし。では行こう」