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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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僕が宮殿からタカシを連れて兵舎に戻ると、なんと、先の闘いでオズワルドさんの指示に従って兵士を癒していたロザリーナも、軍へと自らやってきていた。

確かに僕たちには、“治癒者”が必要だった。

でも僕は、すでに死んだ兵士を諦めることが出来ずに、泣きながら治療をしようとしていたロザリーナを覚えていた。

それはロジャーも見ていたので、僕たちはロザリーナを心配する。

「姉ちゃんよ、大丈夫か?」

ロジャーがそう言うと、彼女はこくんと頷いた。

「自分に出来ることがあるなら、最後まで諦めたくないんです」

彼女はそう言って、前を見ていた。

兵長はロザリーナを迎え入れた。



「と、それから、会ったこともない人間もいるだろう。彼がイワン・ザミョートフ。“監視”のギフトを持ち、ハルキ様を探すのに適任だ」

イワンは僕たちから目を離さず、ちょっと会釈だけをした。彼はくりくりと巻いた赤毛を短く切り、肌の色は活発そうに見え、大きな目をした、中肉中背の男だった。

「ザミョートフ、今ここで、少しやってみてくれるか?」

兵長からそう頼まれたのでイワンは目を閉じる。僕たちはそれをじっと見守っていた。

しばらく彼は頭をあっちへ向けたりこっちへ捻ったりしていたけど、不意にぷるぷるっと首を振る。

「…兵長、「異次元だ」ってだけじゃ、探しようがないです。ハルキ様の持つ巨大な力を追うにしても、僕はそれを見たこともないですし…」

兵長は「ふーむ」と唸った。

「そうか。じゃあなおさらタカシ様の助けが要るな。お兄様、タカシ様をザミョートフに抱かせてやってみてくれないか」

「は、はい…」

僕は「タカシの力を感じることで春喜を追いやすくするんだな」と分かったし、イワンに「大丈夫?」と確認してから、タカシを抱かせてみた。

「ふん…」

イワンはちょっと息を吐いてから、また目を閉じ、タカシを撫でていた。

「……大きな、木が見えます…」

彼はそう言ってから、目を開ける。

「木?その近くに春喜が?」

「ええ、おそらく」

僕とイワンはそう言葉を交わし、僕は「ありがとう、イワン。助かるよ」と言った。

するとイワンは、嬉しそうだけどちょっと恥ずかしがって肩を揺らし、タカシを撫でていた。

「よし。では次は移動方法だ」





訓練場に集まった僕たちの中で、兵長が僕を見ながらこう話を始める。

「君一人が行くなら簡単だが、異次元には君が送ったモンスターがどこかしらに紛れ込んでいる可能性が高い。戦闘員全員で行かなければ危険だ」

僕たちはしばらく考え込んでいたが、ふとアイモが顔を上げる。

「手をかざすんだよね」

「そうだけど…」

「僕たち全員が、鏡に映ればいいんじゃない?」

「そうか、それは案外いい考えかもしれないぞ。踊り場に鏡はある。行ってみよう」

兵長は顎をこすり、僕たちは兵舎の中にある階段の踊り場に急いだ。



踊り場にある大きな鏡には、今、僕たち七人と一匹が全員映り込んでいた。そこに僕は右手をかざす。

緊張気味に、互いの目を見た。

「では、やってみます」

僕はそう言って、そして、「送れ!」と念じる。


すると、世界がぐるっと回転して、胃の中がひっくり返るようなあの感覚が僕を襲った。




気が付くと、僕たちは土のような岩のような地面に足をつけて立っていた。そこは、森林のようだった。でも生えている木はどれも見たことがなく、それに、木の葉はすべて真っ赤だった。

「ここは…」

「移動は成功したようだな」

兵長が僕の隣で満足したように頷いた。僕は慌てて周りを見回し、全員が揃っているか確認した。

居る。ちゃんと居る。でもみんな、見た事もない光景に驚いて、ロザリーナは少し怖がっているようだった。

「見て下さい…空が…!」

ロザリーナはそう言って上を指差す。僕たちが見上げると、アイモは「ああっ!」と叫び声を上げた。


それは、真っ赤な空だった。どう見ても夕焼けには見えない、血のように赤い空が広がり、煙のようなものがところどころ漂う空は、不気味で恐ろしかった。


「早くハルキ様を探そう」