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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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Episode.24 異次元の旅








ハルキを探すために異次元へ旅立つ。僕はその前に、一度家に帰った。

帰宅すると、理子さんがすぐに戸口から出てきて、僕に飛びつく。街の住民には避難命令が出されているから、理子さんは僕が闘いに行くのだということがわかっている。

「どこに行ってたの?それに、避難命令が出て…」

僕は理子さんを見つめる。彼女は僕の目の中に何かを見つけたのか、怯えながらも真っ直ぐ僕を見つめ返してくれた。

朝の光が僕たちを包んでいる。旅立つ僕は、彼女に言わなければいけないことがたくさんあった。

「君は…いつでも僕のそばに居てくれたね」

彼女は黙っていた。

「僕は行かなくちゃいけない。でも、きっと戻って来るよ」


僕は、いろいろなことを思い出していた。

理子さんが僕を呼んで、悲しみの沼から引き上げようとしてくれたこと。

それから、いつも僕がくたびれてしまった時、彼女が慰めてくれたこと。

彼女の生活が僕に寄り添っていたこと。

僕が彼女を愛するほど、彼女もそうしてくれていたこと。


「きっと帰ってくる」


僕がそう繰り返すと、彼女は一度頷き、怯えていた目に勇気を宿そうとして懸命に僕を見つめた。

それから僕は、照れくさかった気持ちも忘れて、彼女をぎゅうっと抱きしめる。

彼女を手放してから、僕は彼女に笑ってみせた。そうすると彼女は、泣きそうになるのを堪えて「待ってる」とだけ言う。


彼女に頷き、名残惜しくなる前に理子さんの元を旅立った。







僕たちは、もしかしたら春喜を探す手がかりになるかもしれないと思って、タカシを連れて行くことにした。

「“監視”のギフトを持つ者に一つ一つ異次元を確かめてもらうのも手かもしれないが…」

そこでロジャーが、ぽんと片手のひらを打った。

「兵長。もしかしたら、タカシ様ならハルキ様を探してくれるんじゃないですか?タカシ様と、あとは監視の棟梁を連れて行けばいいんじゃないかと…」

「そうか。では私はイワンを連れてくる。お兄様はタカシ様を連れに行ってくれ」

「わかりました」



誰も彼もが避難をして、誰も居なくなった街を歩いている時、僕はイワンのことを思い出していた。


「イワン」は、監視のギフトを持つ隊の隊長だ。僕は、何度かしか会ったことがない。

前に聞いた話では、僕が地球に居た頃に僕を見つけて、飛び降りようとした僕を見ていたのも彼だったと聞いた。

数回会った感想にしか過ぎないけど、彼は自分の任務を億劫だと思っていて、監視のギフトをあまり好んでいないように思った。

それはそうかもしれない。僕だって、誰の生活でも悟られることなく覗けるなんて力が手に入ったとしたら、自分を薄気味悪く感じるような気がする。

でも、僕たちはイワンの力を借りたい。


僕は宮殿へと急いだ。