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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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Episode.23 ハルキを探せ!








僕は春喜を見失った後で、すぐに街へと走って行った。


春喜が僕から逃れて、神の命ずるままに街を滅ぼしてしまう前に、早く止めないと。春喜を止めなくちゃ!


そう思って街の中へ入り、中心部目掛けて僕は走った。


しばらくすると方々で扉の開く音、誰かが水を汲む音などがちらほらと聴こえてきて、僕の後ろで太陽が昇り、赤い煉瓦の道が光を照り返して鮮やかに輝いて、家々の白い石壁は眩く光り出した。


「居ない…?」

僕は市場から坂を上った展望台まで来ていた。春喜の姿は無い。ここではないのかもしれないけど、街を見渡すにはここが一番だ。

でも、そこから街を見下ろしてみても、青い炎はどこにも見えなかった。

遠く彼方で、これから商売に行くのだろう人などが、家族に挨拶をしている声が聴こえる。

「どういうことだ…?」



僕はしばらく街の中を歩き回ったけど、春喜の姿は無く、人々が無残にも殺されていくなんてことも起きなかった。

とりもなおさず、僕は軍の兵舎に向かった。



門番はちょっと眠そうに僕を迎えて、昨日終わった闘いへの労いとして、丁寧に会釈をしてくれた。


兵長室のドアをノックすると、十秒ほどして「入れ」という返事があった。

扉を開けると兵長はソファから起き上がりかけているところだった。今まで眠っていたんだろう。

「お休みのところ、失礼します。兵長、お話があります」

兵長は思い切ったような僕の口調に少し目線を尖らせ、僕にもソファに座るように促した。

「話とは?」




僕が一言一言話すごとに、兵長は焦り、青ざめ、やがては失意に呑まれたようにうつむいた。僕は夢の話と春喜の話を終えてから、こう言った。

「兵長、僕は弟にそんなことをさせたくないんです。弟はいわば、神様に利用されているだけです!そんなことで殺戮などさせません!それに…」

そこで僕は、街の中を走り回っている時に願っていたことを言いたくなった。

兵長がそれに頷いてくれるかは分からない。でも僕は、誰にでもいいから、この気持ちを話したかった。ずっとそう考えていた。

「それに、僕は…弟を人間に戻してやりたいんです…!もう一度、ただの兄弟として…僕たちはそうやって幸せに暮らしていたんですから…!」

僕は泣きながら、必死の思いで兵長を見つめた。

どうか彼が、「残念だが、我々を殺すようなら、ハルキ様を殺すしかない」とは言い出しませんように。そう祈った。

兵長も真剣に僕を見つめてくれていた。そして、一度頷くと、彼は急いで立ち上がり、扉へと歩く。

「兵士を全員集めるぞ!ハルキ様を探そう!私たちは一度、宮殿に行く必要がある!君は一班の者を叩き起こして、兵長室に居ろ!」

「は…はい!ありがとうございます!」


僕はその時、嬉しかった。


弟を大切に思う気持ちを分かってもらえたのだ。


僕は不安が消え、力が湧くのを感じた。


それからすぐにロジャーの部屋、ジョンの部屋、アイモの居る待機室を回り、兵長室へと戻った。そして彼らにも、神から言い渡されたことを伝えた。




「僕たち、死んじゃうの…?」

「あんまりだ…そんなの…」

アイモとジョンが絶望に暮れる中、ロジャーはじっと窓の外を見ていた。そして、僕の話が終わってから、こう言った。

「なあ…もしかして、ハルキ様は…異次元に自分を飛ばしたんじゃないか…?」

「えっ…?」

僕たちが呆気に取られている間に、ロジャーは僕を見て話を続ける。

「急に消えたんだろ?それってお前やハルキ様が戦場で使った力に似てるじゃねえか」

「だとしたら、人殺しをしない方法として、それを選んだのかもしれねえ、と、俺は思うんだが…」

僕は考え直して、確かにそうかもしれないと思った。

多分春喜なら、腕なんか動かさずとも力を使えるだろう。そう思っていると、ロジャーの隣でジョンも頷く。

「それは考えられるな。ハルキ様は泣いてたんだろ?きっと殺したくなかったんだ。だったら、一番いい方法でもある」

「そうだね、僕だって、神さまにそんなふうにあやつられちゃったら、そうするかも…」

アイモは悲しそうな顔をしていた。

僕は物事が一つの線上に並んだ感覚を得て頷き、みんなにこう言った。


「みんなに頼みたいことがあるんだ」


「なんだよ」

「なあに?」


僕は三人を見つめた。それが反射するように、三人からそれぞれ強い意志が返ってくる。


「弟を止めるのを、手伝ってほしい。僕一人では多分無理だと思う。それに、僕は弟を、元の子どもに戻してやりたいんだ…どうしたらいいのかはわからない。だから、みんな…」


そう言うと、ロジャーは僕を見てにやっと笑った。そして立ち上がる。


「頼まれるまでもねえことだ。今までだって、一緒に闘ってきたじゃねえか!」


僕は思わず泣いてしまった。僕の肩に重く圧し掛かった大きな荷を、みんなが手分けして背負ってくれる。こんなことがあるなんて。





その後、兵士たちが起きてきて、ざわざわと騒ぎ始める音が聴こえ、兵長が戻ってきた。

「集まったか。では宮殿に行ってみよう」

僕たちは立ち上がり、敬礼をして、「はい!」と返事をした。