僕の弟、ハルキを探して<第二部>(改訂版)
僕が一言一言話すごとに、兵長は焦り、青ざめ、やがては失意に呑まれたようにうつむいた。僕は夢の話と春喜の話を終えてから、こう言った。
「兵長、僕は弟にそんなことをさせたくないんです。弟はいわば、神様に利用されているだけです!そんなことで殺戮などさせません!それに…」
そこで僕は、街の中を走り回っている時に願っていたことを言いたくなった。
兵長がそれに頷いてくれるかは分からない。でも僕は、誰にでもいいから、この気持ちを話したかった。ずっとそう考えていた。
「それに、僕は…弟を人間に戻してやりたいんです…!もう一度、ただの兄弟として…僕たちはそうやって幸せに暮らしていたんですから…!」
僕は泣きながら、必死の思いで兵長を見つめた。
どうか彼が、「残念だが、我々を殺すようなら、ハルキ様を殺すしかない」とは言い出しませんように。そう祈った。
兵長も真剣に僕を見つめてくれていた。そして、一度頷くと、彼は急いで立ち上がり、扉へと歩く。
「兵士を全員集めるぞ!ハルキ様を探そう!私たちは一度、宮殿に行く必要がある!君は一班の者を叩き起こして、兵長室に居ろ!」
「は…はい!ありがとうございます!」
僕はその時、嬉しかった。
弟を大切に思う気持ちを分かってもらえたのだ。
僕は不安が消え、力が湧くのを感じた。
それからすぐにロジャーの部屋、ジョンの部屋、アイモの居る待機室を回り、兵長室へと戻った。そして彼らにも、神から言い渡されたことを伝えた。
「僕たち、死んじゃうの…?」
「あんまりだ…そんなの…」
アイモとジョンが絶望に暮れる中、ロジャーはじっと窓の外を見ていた。そして、僕の話が終わってから、こう言った。
「なあ…もしかして、ハルキ様は…異次元に自分を飛ばしたんじゃないか…?」
「えっ…?」
僕たちが呆気に取られている間に、ロジャーは僕を見て話を続ける。
「急に消えたんだろ?それってお前やハルキ様が戦場で使った力に似てるじゃねえか」
「だとしたら、人殺しをしない方法として、それを選んだのかもしれねえ、と、俺は思うんだが…」
僕は考え直して、確かにそうかもしれないと思った。
多分春喜なら、腕なんか動かさずとも力を使えるだろう。そう思っていると、ロジャーの隣でジョンも頷く。
「それは考えられるな。ハルキ様は泣いてたんだろ?きっと殺したくなかったんだ。だったら、一番いい方法でもある」
「そうだね、僕だって、神さまにそんなふうにあやつられちゃったら、そうするかも…」
アイモは悲しそうな顔をしていた。
僕は物事が一つの線上に並んだ感覚を得て頷き、みんなにこう言った。
「みんなに頼みたいことがあるんだ」
「なんだよ」
「なあに?」
僕は三人を見つめた。それが反射するように、三人からそれぞれ強い意志が返ってくる。
「弟を止めるのを、手伝ってほしい。僕一人では多分無理だと思う。それに、僕は弟を、元の子どもに戻してやりたいんだ…どうしたらいいのかはわからない。だから、みんな…」
そう言うと、ロジャーは僕を見てにやっと笑った。そして立ち上がる。
「頼まれるまでもねえことだ。今までだって、一緒に闘ってきたじゃねえか!」
僕は思わず泣いてしまった。僕の肩に重く圧し掛かった大きな荷を、みんなが手分けして背負ってくれる。こんなことがあるなんて。
作品名:僕の弟、ハルキを探して<第二部>(改訂版) 作家名:桐生甘太郎



