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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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目を覚ました僕の全身はびっしょりと汗に濡れ、がくがくと震えていた。心臓が痛い。

それから僕は震え続ける体を起こして、「どうかただの夢であってくれ、僕だけの想像であってくれ」と願いながらも、寝巻から外出着に急いで着替え、外に飛び出した。



でも、杉の木なんか僕はこの世界に来てから見ていなかった。

そうだ、あれは僕たちが元居た地球にあった木じゃないか。でも僕は街を通る川辺を走り、必死に杉らしき木を探して回った。それは確かに川辺に立っていた。



大きな一本杉は、宮殿に近い街の門の傍をくぐって、門の外へと流れ出る川辺に生えていた。

僕は杉の木を触ってみて、確かにそこにあることを確認してから、街に戻って人々を連れて来るため、林の中を抜けようとした。


でもその時、背後で宮殿に近い街の門が「ギイイ…」という音を立て、開く。


僕の体を途端に恐怖が電流のように走り抜け、心臓や血管が一斉にドクドクと脈打って、「振り返ってはいけない」とわけもなく知らせた。

それでも僕は、抗いようのない思いに振り向く。



僕の目の先にある小道に、春喜は居た。

春喜はまるで眠っているように表情の無い顔で、青い光を纏っている。

その光は炎のように春喜の周りに揺らめいて、爆発を待つ火花のようなパチパチとした輝きが、時々春喜の周りに飛び交った。


春喜は足元の草や苔を一足一足踏んで、迷いなくゆっくりと街へと向かっている。そして僕のことなど見えていないように、春喜は僕の傍を通り過ぎようとした。



僕が止めなくちゃいけない。何が何でも。そう思った時、僕の心に底知れぬ力が生まれ、僕は春喜にしがみつく。

「春喜!」

僕が春喜を抱きしめて引き留めると、僕の体は青い炎にじりじりと焼けた。でも、そんな痛みには構っていられない。春喜は僕をずるずると引きずっていく。すごい力だ。


「春喜…目を覚ませ!春喜!僕だよ!お兄ちゃんだよ!」


そう言ってみても無駄かもしれない。でも僕はそれだけに望みを懸けた。


すると、春喜は立ち止まった。青い光に僕の体は焦がされ続けていたけど、僕は少しほっとして春喜の顔を覗き込み、その時春喜も、僕を振り向いた。


振り返った春喜は元通り、春喜の顔をしていた。子供らしく、不安げで、でもとても悲しそうだった。

そのうちにその顔が悔しそうに怯えて、春喜は声も無く涙を流す。僕はもう一度、春喜をぎゅっと抱き締めた。

「大丈夫だ。大丈夫…お兄ちゃんがなんとかする。だから…」

僕がそう言い掛けた時、僕の腕は急に空を切って、今まで抱きしめていた春喜は、青い光を連れて居なくなった。


「え…?春喜…?春喜!どこに居るんだ!待ってくれ!」



まさか、もう街に。


そう思った時、僕の体を悪寒が走り、僕は街に向かって駆け出していた。