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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

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オズワルドさんはアイモを守って戦死した。議長の突然の死に議会は混乱を極め、「後継者を自分に」と自薦する者、それから派閥同士の争いが起きた。

新聞の号外の表には、「多数の戦死者を出しながらもこの土地が守られた」という事実が長々と書かれている。そしてその左下には、「オズワルド議長死去」とも書かれて、今後の議会を危ぶむ文章があった。

号外の裏面には、五十人にも上る戦死者の名前と、哀悼の意が綴られている。



僕は家に帰り、新聞を手にして、暖炉の前でソファに腰を下ろしていた。


涙を流すまいと必死に努力したが、無駄だった。


オズワルドさんの優しい顔。

アルベリッヒが仲間を思って流した涙。

ヴィヴィアンの最期の言葉。

兵士たちが倒れて動かなくなる前に何度も母親を呼んだ声。

それらが頭の中を回り続けていた。


あと少しだったのに、オズワルドさんを守れなかった。一緒に居たアルベリッヒを、見失って死なせてしまった。隣に居たヴィヴィアンも。兵士一人一人の命も。僕はみんな。みんなを。



気が付くと僕は、自分の右腕を暖炉の縁に思い切りぶつけていた。何度も、何度も、何度も。


「もうやめて!」


はっとして振り返ると、理子さんが正気を失った僕を止めようとして僕に抱き着き、必死に僕の腕を押さえていた。

呆然とした僕の前で、彼女は泣きながら一生懸命首を振り、小さく絞り出すような声で繰り返した。

「あなたのせいじゃない…あなたのせいじゃない…!」

僕は泣いた。彼女を抱きしめて、嗚咽し、むせ込んでも涙は止まらず、理子さんはその間、ずっと僕を抱きしめてくれていた。




僕はその夜、一人で眠った。

僕のためにずっと傍にいて憔悴してしまった彼女をベッドに寝かせ、眠ったのを見届けてから自分のベッドに戻った。

なぜ眠れたのか不思議だった。それほどに悲しみは深く、僕はもう居なくなってしまった人たちの面影を必死に追いかけながら、そのうちに、深い深い眠りへと落ち込んでいった。