僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)
Episode.21 護る者
それからしばらく「ハルキ様」の声は民衆には伝えられず、おかしいと感じ始めた人たちが議会に集団で詰め寄ったりしていた。
「あと少しでうちにも来るんだろうな」と考えているうちに、そろそろ一週間になる。
僕はその日、彼女と夜を共に過ごしていた。
「不思議ですね」
白いシーツを花嫁のヴェールのようにかぶって体を包み、僕の隣に寝転ぶ彼女が、そう囁く。
「なにが?」
僕がそう聞くと、彼女はふふふと笑って、シーツの中から素肌の腕を出し、僕の頬を撫でた。その手の優しさを、僕はいつまでも感じていたい。
「こうしてこの世界に来なければ、多分、私とあなた、知り合うこともなかったから」
その時彼女は変わった。僕を真っすぐ見て、そして心をほどいてくれた。
僕は彼女の手を取り、自分の頬に擦りつけた。嬉しくて。
闇の中に灯るロウソクの灯りだけがほのかに彼女の輪郭を照らしている。
それは儚くて、すぐに消えてしまうのではないかと思ったから、僕は彼女に近寄って、その体を片腕で抱き締めた。
「…きっと、会ってたよ」
「え…?」
僕は胸がドキドキと高鳴って、今この時のために自分が生まれていたのだと思った。そんなことは初めてだった。
「会ったら、必ず好きになってた」
彼女が切なそうに眉を寄せ、僕の胸に顔を埋める。素肌に感じる彼女のくすぐったい細い髪が、彼女の何もかもが、愛おしかった。
「…わたしも」
作品名:僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結) 作家名:桐生甘太郎