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ヒコマル参上 マゲーロ3

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「出入り口にはサイズ変換装置っていうのがあってね、大きい体のエイリアンも地下世界に入れるようになっているんだよ。マゲーロはもともとの体でここに出入りできるんだ」
「私たちがどうして通れるの」
「それは前にアキヒコが彼らの食べ物を食べて彼らと同じバイブレーションを発するようになったから、アキヒコが通る時はエイリアンとみなされるんだ。アキヒコと手をつないでつながっていれば全員同類とみなされたんだよ。ヒコマルを
抱えたミユキちゃんがぼくをつかんで、ぼくはアキヒコをつかんでたから」
「なんだかよくわからないけど、じゃあ出ようと思えば出られるのね」
「そうだよ」
「だったら、ちょっとそっちの世界を見物してからでも遅くないわよね」
「え?」
「いや、それはどうかな」
 思わずマゲーロを見ると、
「捕獲が終了したんだから回収して終わりです、ご協力ありがとうございました」とマゲーロは手を出して捕獲ケースを要求した。
 するとぼくがマゲーロに渡そうと差し出したケースをミユキちゃんはさっと取り上げ、
「あら、協力したお礼にちょっとくらいいいじゃない」
といいだした。
「みだりによそ者をいれてはいけません、って規則なんだ」
「だってタカとアキは入ってんでしょ」
「いやだからぼくたちは最初にダミーを作らされて成り行きで入れ替わったから」
「なにそれ、私にも作ってよ」
「そう簡単じゃないよ」。
とマゲーロが捕獲ケースを取り上げようとした。
「きゃー」
 もみ合った勢いで、ミユキちゃんがしりもちをつき、ケースはコロコロと転がって一瞬で暗闇にまぎれてしまった。
「おい、やばいぞ」
マゲーロが叫び、
「ヒコマル、追いかけてー」
アキヒコが叫んだ。
「わん」
 ヒコマルが突進したが、捕獲ケースは坂を転がり続けているようだ。ぼくたちも後を追うが、足元は暗くてよくわからない。
 クンクン匂いを嗅いでいるヒコマルにようやく追いついたが、ヒコマルも苦戦している。
「わんわん!」
 見つけたみたいだ。
 そこから妙に明るくなってどうやらチューブのプラットホームが近いらしい。

「おいおい、犬が鳴いてるのを誰かに聞かれたらまずいぞ」
マゲーロが訴えた。
 アキヒコが走って行ってヒコマルに声をかけ目の前のケースを拾おうとしたとき、ぶぅーん、と音が響きチューブのカプセルが来てしまった。
「やべえ、犬を隠せ」
マゲーロがぼくに目配せした。
 ぼくはあわててヒコマルを抱きあげ、顔だけだしてリュックに入れて背負った。、アキヒコが「静かにね」といって頭を撫でると大人しくしている。
 トンネルの向こうから光が突進してくる。
「おまえら、なんでもなさそうについてくるんだぞ、いいな。」
やがてカプセルが止まり、シューッとドアが開くと、マゲーロの同類が一人おりてきた。
「パトロールごくろうさまであります」
マゲーロが敬礼する。
そいつも
「お、地上の斥候任務だね、ごくろうさまです」と敬礼を返してすれ違っていった。
 その時、彼の足元にケースがあったのだ。
 すれ違いざま靴のつま先が当たってケースは転がり、さらにマゲーロの足に当たってころころとチューブのカプセルの中に転がり込んでしまったではないか。
「あーっ、失礼するであります」
マゲーロはぼくらのほうをちらっと見ながら
「早く乗れ!」
とチューブのカプセルに突進した。ぼくたちも置いて行かれては困るので、一緒に飛び込んだ。
 シューっと音がしてカプセルの扉が閉まった。
「とりあえずこのまんま地下に行くしかないなあ。」マゲーロが捕獲ケースを拾ってポケットに入れながら
「お前ら、連れてこられた地上の人間の子どもらしくおとなしくしてろよ。」
 マゲーロはしぶしぶ、といった顔で運転席に座って操作をはじめた。
 嬉しそうなのはミユキちゃんである。
「うちの庭にこんな入口があったなんてしらなかったわあ」
 興味津々でキョロキョロしている。いいのか、連れてきちゃって。


11章

「とにかく、黙ってついて来いよ。怪しまれないようにな」
 チューブのカプセルからでて開口一番、マゲーロはぼくたち、というよりミユキちゃんにくぎを刺した。
「わかってるわよ」
 緊張した声でミユキちゃんが答えた。
 ぼくたちが通路を歩けば誰かしらにすれ違ったが、当たり前のような顔をしてやりすごさなければならないので、キョロキョロしたくてしょうがないミユキちゃんは頑張って下を向いていた。

 マゲーロは手近な空き室を探し、ぼくたちを入れると、ドアの外側になにか札を張り付けてドアを閉め鍵をかけた。「使用中」とかかいてあるんだろう。
「おれはとにかくこのハムスター入りケースをしかるべきところに届ける必要が
ある。でもって問題はこの女の子だ。ここに来てはダメなんだから。さらに忘れてもらわないといけないし。タカ、あれ持ってるだろ、記憶塗り替え装置」
と、小声でぼくに言ったマゲーロの言葉を耳に挟んだミユキちゃんは
「いやよ。私ここまでかかわったんだから、もう仲間も同然よ。ねえお願い、仲間に入れてよ。いいじゃない」
と食い下がった。
「うーん、ここまで知られてしまっていると都合よい部分だけ記憶消去ができるかわかんないしなあ。でもこれ以上人間とかかわらせるとリスク増大だしなあ」
マゲーロは困り果てた顔でぶつぶつ一人ごとを言って、ぼくたちを見た。そこで
ぼくは
「あのさ、マゲーロ、ほら、ぼくたちみたいに地上で情報収集するのに女子しか入れない場所とかあるかもしれないじゃん。女の子もいた方がいいよ」
助け船をだしてあげた。
「そうよ、そうそう、大体映画なんかだと女スパイにしてやられるって相場がきまってるじゃない。ぜったいアタシがいた方がいいって。役に立つから」
マゲーロはしばし黙考していたが
「仕方ない。以前お前らでやったみたいにこの女の子のコピーを作っておくしか
ないか。」
「もう、私にはミユキって名前があるの。いつまで、この女の子、なんて言ってるのよ?」
ミユキちゃんが口をとがらせたので
「じゃあこれからミユキって呼ぶから。コピーしたほうはエージェントM」

「いいな、おれは前みたいに子どもを捕獲しました、って感じで連れて行く。
 タカ、例の記憶塗り替え装置だしてくれ。そう、これで博士の記憶をごまかすわ。ああ、また危ない橋を綱渡りだ…やれやれ、ややこしいこった」
 マゲーロはぶつぶつ文句を言いながらミユキちゃんを連れて部屋をでていった。

 
 12章
 
 というわけで、マゲーロたちが部屋を出てしばらくすると
 「よっ、お久しぶりー」
 とエージェントTとAが現れた。彼らとしゃべりながら待っていると、ようやくマゲーロとミユキちゃんたちが戻ってきた。ミユキちゃんコピーも一緒だ。
「うまくいったようだね」
「なんとかな。ミユキっちのコピーを作ったところで博士に記憶変換光線を浴びせといた」
「さて、ではエージェントT,A,Mは本体と交代で地上任務な。新人のコピーミユキっちを頼むよ。」
「やったあ、ずっと地下だったから飽き飽きしてたんだよね」
 エージェントTが歓声を上げ、
「さ、記憶交換するよ」
と手を差し出した。