小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ヒコマル参上 マゲーロ3

INDEX|5ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

「いいから、このハムスターが本当はハムスターじゃないってことなの?」
ミユキちゃんが割って入った。
「そうであります。危険なので回収したいのであります。こいつは炭素をエネルギーにするやつで、だから炭素でできている地球はとっても都合のいい星で、古来より住み着いてしまったのであります。砂糖を与えると図に乗ります。ひまわりのタネでも穀物でも炭素は摂取できるが、砂糖はもっと楽に吸収できるし、例えば人を噛んだりして人間も炭素でできてることを知って味をしめれば人食いもやりかねないんだ。だから手渡しでえさをやるなんて危険だといったんだ」
 やっといつものマゲーロに戻ってきた。
 しかし、今の話はすごくやばいってことじゃないか?
「昔からネズミが人間の赤ん坊を襲うとか、聞いたことないか。あれは人食い化
したこいつらの仕業だ。ただ、やつらは長年の間に飼育している我々の与えるえ
さ以外のものを食うと腹を壊して寿命が極端に縮むので地球人大パニックは今のところ起こってない。ただ目をじっと見させて催眠術をかけるような技を持っているので、奴らに操られて危険な状況を招く危険性がある。集団で海に飛び込むレミングの群れなども中に一匹奴らがまぎれこんで先導してるからだ。普通のネズミは溺れても奴らに酸素は必要じゃない。」
「ええ、そんなこと初めて聞いたよ。それ怖すぎない?」
 ぼくは口をはさんだ。黙って聞いてなんかいられないよ。
「だからあ、お前らが怖がると思ったからこんな話する前に回収するつもりだったんだ」
「ねえ、炭素ってコレはダイヤモンドも食べちゃうの?」
 ミユキちゃんがちょっと知識のあるところを披露した。
「いや、ウンコは食べない」
「え?何言ってるの?」
 ぼくとミユキちゃんは思わず顔を見合わせた。
「もう、汚いこと言わないでよ!」
 ミユキちゃんがそっぽを向く。
「悪い、でも、こいつのウンコがダイヤモンドだっていってるんだ」
「何それ?」
 ミユキちゃんが身をのりだしてきた。大人も子供も女子は宝石には目の色を変えるんだねえ。
「ちょっと、それ詳しく教えてよ」
「だからだな、こいつは炭素を体内でエネルギーにするが、その過程でダイヤが
合成される。奴にとってはそれは不要なものであるからフンとして排泄される、それだけのことです」
 マゲーロはさりげなく言ったが、ミユキちゃんは目を皿のようにしてケージの中にフンが落ちてないか探している。
 その姿をみたマゲーロは「これだから人間は」とつぶやく。
「あのなあ、相当量食べないとフンはしないぜ。何日かかるか何か月かかるか、その時の体調によりけりだしな」
「だったらさ、これをたくさん飼ってたくさんえさやって、ダイヤを量産したら?そうしたら大金持ちじゃん!」
 ミユキちゃんの目が輝いてる。人間はさもしいねえ、と言わんばかりの表情でマゲーロは
「当然そう考える人間がいるだろう。だから人間にはこういうことは教えないんだ。そもそも我々だって地下で暮らすにせよ、多少は地表世界から必要なものを手に入れなければならないし、資金も必要なんだ。そのためにこそ、苦労してこいつを長年飼育しているんだから。ちなみに地球に存在するダイヤモンドはほぼこいつのフンと言っても過言ではない。かなり古くからこの星に住み着いている
から野生化して生息している場所もなくはない。それが今のダイヤモンド鉱山だったりしている。」
 そうだったんだあ、知らなかった。マゲーロたちがどうやって資金を得ていたかなんて考えたこともなかったよ。
「だからな、我々は必要があってこいつらを飼っているんだ。地上に逃げられるのはまずいんだ。というわけで、回収させてもらう。」
 とマゲーロはぼくの方を見て「あれ、だして」と合図した。
「あ、そう、そうなんだ。連れて帰らないといけなくてさ。ごめんね、ミユキちゃん」
と例の回収カプセルをバッグから取り出した。
「え、もってっちゃうの?まあ仕方ないのはわかったけど、ダイヤの一粒位私にくれてもいいんじゃない?」
 ミユキちゃんが言い出した。
「これだから、人間は欲深くていけない。そいつはエサにもよるがめったにウンコしないんだぞ」
マゲーロはケージの前に走っていって
「おい、タカ、回収!」と命令した。
 ぼくは慌ててケージの入り口に捕獲ケースをセットし、慎重に入り口を開けたその時、キラリと光るものが転がるのがケージの底に見えた。
「あ、ダイヤモンド!」
 ミユキちゃんが突進して手を伸ばしたのと、ハムスターが入口からでようとしていたのが同時だった。
 ガタガタガッタン。
 ケージが転げ、ミユキちゃんがひっくり返り、ハムスターが飛び出して畳に着地、ぼくは捕獲ケースを持ったままぼーっとことの成り行きをみていたら
「おい、タカ!なにしてる、つかまえろ」
 マゲーロが叫び、慌てて畳に手を伸ばしたがハムスターはすり抜けて窓から庭に飛び出してしまった。
 すかさずアキヒコが
「ヒコマルー、ハムスターつかまえてー」と窓から叫ぶと、「わん!」と威勢のいい返事が返ってきた。なんでかアキヒコの言葉は通じるらしい。
 ぼくらは階段を駆け下りた。
「あら、もうお帰り?」と出てきたミユキちゃんのお母さんめがけて、ぼくはバッグからとりだした記憶塗り替え装置を向けてスイッチを入れ、
「ぼくたちしばらく外であそびまーす」
 と声をかけ、玄関に走りでた。
 庭では犬たちがわんわん吠えている。
 見ると庭の片隅の木の根元に小さな穴があいていて、ハムスターはそこに潜り込もうとしていた。木の根がじゃましてヒコマルは顔を突っ込めない。
「タカ、捕獲ケースだ!」マゲーロがポケットから飛び出して叫ぶ。
 ぼくはすでにふたのあいたケースを手に近づき、ハムスターにぱっとかぶせ、そのまま木の根元につんのめった。
 とっさに片手でそばにいたアキヒコの腕をつかみ、ヒコマルをおさえていたミユキちゃんはぼくを助けようと片手でぼくの肩をつかみ、その瞬間、ぼくたちは団子になって転がり天地がひっくり返ったと思ったら、穴に吸い込まれていた。
 うそ、これは例の穴の一つだったのか。
 そうだ、捕獲ケース。右手を持ち上げると大丈夫、ちゃんと中に入ってふたもしまっている。捕獲物に反応して自動的に吸い込みふたが閉まるようになっていたようだ。ひとまずは安心である。
「なんなのよ、なにが起こったのよ」
 ミユキちゃんが立ち上がりながら薄暗い周囲を見回した。
 そこに等身大のマゲーロを発見してもっとびっくりだ。
「やだ、でっかくなってるう」
 
      
 10章
 
「おまえらが小さくなったんだよ」
マゲーロは言った。
 どうやらここは地下世界にいく数少ない出入り口の一つで、ぼくたちはいつもの空地でやるように、エイリアンフードを摂取してマゲーロたちと同じバイブレーションを発しているアキヒコとともに出入り口を通過できてしまったらしい。
「ねえ、どういうこと?これどうなってんの?」
 ミユキちゃんが戸惑うのも無理はない。

「あのね、この穴は多分マゲーロたちが暮らす地下世界の出入り口なんだよ」
 ぼくが言うと
「なんで私たちが小さくなって、こいつが大きくなってるのよ」