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哲学者の苦悩

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天寿を全うするまで暇なので家の近くの公園で日光浴をしようと歩いていた。昼ご飯を食べ、歯磨きをした後の爽快感に浸り、気持ちよく散歩していた最中、不図、甘い物が食べたくなりコンビニへ立ち寄った。
ここで迷うことはしなかった、否、出来なかった。私が扉を開けようと手すりを触れると、急に現れた横からの重力により前へ倒れてしまったのだ。しまった、誰かが引いて開けようとしたところに僕が押してしまったが故に、二倍に引っ張られた扉によって吹き飛ばされてしまったのか、と推測した所、どうやらその通りで、目の前に綺麗な女性の顔があった。倒れたときに、同棲初日の夜向かい合って寝るような体勢になってしまったようだ。

「やあ麗しきお姉さん、奇遇だね一緒に倒れ込むなんて。これは最早予定調和としか言いようがないよ」

引っ叩かれて気を失いました。余程強かったらしく、起きたときに前歯が一本抜けてしまったようです。
ああ、気を利かせてボケたというのに、なんて罰当たりな女性だったのだろう。きっとリヴァイアサンがないこの時代、調子に乗って己の欲望の限りを尽くしているのだろう。頬に一筋の涙が流れました。きっと季節外れの花粉です。
作品名:哲学者の苦悩 作家名:茂野柿