哲学者の苦悩
と、思うのも束の間、私は起きたらコンビニの事務所にいたのです。打擲された部位が悪かったのか、顎に違和感があることからそういう事だと察し、で、倒れたままの客を、幾ら自業自得の業とは言え、そのまま打っちゃっておくことは出来ず、致し方なしにここまで運んできたのだと、店長らしき男は言う。
「あのねえ、困りますよ。彼女さんだかなんだか知りませんけど、喧嘩なら普通そとでやるもんでしょうに」と、言を繋いだ。
私はのそっと起き上った後、「この世は予定調和なのですよ」と吐き捨て、では、と、その場を後にした。運命の相手を追わなくてはならないのである。
しかし、案の定というか、必然的というか、警察沙汰にまで発展していようとしていた最中であったためか、事の重大さに気づかぬ私は、男の内情が如何に怒一色であることなぞ知らぬ始末なのであった。から、その、予定調和とも言い難き、神が山を紙の如く破り捨てるような雷程の怒号が、事務室を貫通して店内までをも轟かせた。と、飽く迄も比喩表現ではあるが、鼓膜に小さい雷が落ちたかのような怒号であったことは確かである。つまり、男は感情の一切を爆発させる形で、私は怒られたのだ。