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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第一部>

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白い壁の向こうには、白い空間があった。その建物は六角形に白い石で組まれていて、床も同じくつるつるに磨き上げられた大きな一枚の白い石を切り出して造られている。その上には白い絨毯が敷かれて、部屋の中央に大きなベッドがあった。


そこには、春喜が眠っていた。



「はるき…春喜!…こんなところに…」



僕は歓喜した。弟はここに居た。今は眠っている。早く起こして、元の世界に帰ろう!



僕がそう思って春喜に駆け寄ろうとすると、急に老人は僕の腕を掴み、僕がびくともしないほどの力で引き留めた。

「なっ…何をするんです!」

「おやめになった方がよろしいでしょう」


老人は僕に「そこから動かないでいて下さい」と言って、つかつかとベッドの近くまで歩み寄り、ベッドに眠っている春喜に向かってゆっくり手を伸ばした。すると、あるところで老人の手は止まって、老人の手のひらのあたりで火花が散るような光が見えた。


もう一度老人が僕のところまで戻って来て、春喜に向かって差し出していた片手のひらをひっくり返して僕に見せる。

「あっ…!」

老人の手のひらは、真っ赤に血が滴っていた。

「ど…どういうことですか…!?なぜ…!」

僕が混乱して取り乱していると、老人は自分のもう片方の手のひらを、真っ赤に焼けただれた手のひらに重ねる。ああ、痛そうだ。僕は目を背けていた。すると老人が「ご覧ください」と言うので、見たくはないけど、僕はもう一度そちらを向いた。

老人が僕に差し出した両手は、もう元通りにすべらかで、傷跡すら残っていなかった。

「えっ!?な、なんで!?」

「手品ではございません。とにかく、ハルキ様のお近くには行かない方がよろしいかと存じます」

僕は、老人が春喜に近寄って怪我を負ったり、その怪我が一瞬にして治ったことも究明したかったけど、その前に、もちろん聞きたいことが山ほどあった。そうだ。さっきこの老人は、春喜を「神」だと言った。ずっと名前の後に「様」と付けて呼んでいるし、こんな仰々しい神殿のような場所に春喜を寝かせて、満足そうな顔をしている。


でも、春喜は普通の小学一年生の男の子のはずだ。神になんかなれるわけがない。それが一体どうしてこんなことになっているんだ?とにかくこの老人から全部からくりを聞き出して、春喜と一緒に元の世界に戻れるようにしなくちゃ。



「聞きたいことは、たくさんあります…」

僕はいくらか挑むような気持ちで、老人を見つめた。老人は少しだけ渋い顔をするように目を細めたけど、「なんでございましても、お答え致しましょう」と言って、僕に恭しく一礼した。