シロアリバスターズ
「そこで巣を作る・・・」
「そうです! そうなったら終わりなんです! ひと夏で何十万匹にも増えて、次の夏には周囲の柱に羽アリが移る。そいつらが床下の木材を食い漁れば、4~5年で床が抜けてしまいます!」
「そんな家、聞いたことないですけど」
「そりゃそうですよ。家の人は湿気のせいだって思ってるし、修理する大工はシロアリに気付いても、黙ったままなんですよ」
「どうして言ってくれないんですか?」
「黙っとけば、また数年後に修理工事の依頼が来るじゃないですか?」
主婦は驚きの表情を見せながらも、口を開けて大きく頷くのだった。
「消毒しない限り、同じことの繰り返しってこと?」
「その通り。湿気のせいだって思ってますから、気付かないまま修理して、またシロアリに新しい木材を餌として提供してるようなことになるんですよね」
「へえ? 怖いですね」
「だから、僕たちみたいな専門家が調査に回る必要があるんです」
「シロアリがわいてる家って多いんですか?」
植村は少し笑いながら、
「はっきり言って、この界隈はどの家も、多かれ少なかれ被害にあってると思います」
「でも、今までシロアリの話なんか近所で聞いたことない・・・」
「知らないうちにやられて、誰もその事実に気付いてないだけですよ。その証拠にこの家建てられた時、予防消毒ってされたのご存じですか?」
「ええ? そうだったかしら? よく覚えてないですけど」
「そうですか。普通は家を建てる時って、銀行からお金を借りるでしょ」
「はい。借りました」