シロアリバスターズ
プロローグ
「おい、あいつまたやってやがるぜ」
「本当だ。懲りねえ奴だねえ。またサツに捕まるって」
商用バンの車内で植村と小寺が、後部座席で“葉っぱ”を吸う岩田のことを話していた。彼らはシロアリ消毒会社の車で、町中をローラー作戦して、一軒ずつピンポンしながら回る営業部隊である。
3人で日に100件を超える一般住宅を訪問しながら、床下の無料点検を謳い、シロアリ消毒が必要だと、強引に契約を取ることで法外な利益を上げている。
「岩田! いい加減にしとかないとラリっちまって、仕事にならねえぞ!」
運転する植村が声を荒げて言った。
「大丈夫だって、どんくらいまでなら平気か把握してっからよう」
岩田は半目の状態で答えた。
「でも、執行猶予中だろ。見つかっても俺ら知らねえぞ」
小寺も半分怒りながらそう言うと、岩田は、
「その時は共犯だな」
「バカ言うな。俺らは『止めようとした』って証言するぜ」
「ははは、そんなこと言っても無駄だって、検査されたら、お前らも陽性反応が出るからな」
「なんでだよ」
「副流煙って知らねえの? バーカ」
植村と小寺は顔を見合わせ、窓を開けた。