シロアリバスターズ
「この上は台所ですよね」
「はいそうです」
主婦は不安そうに答える。
「思った通り、水回りはやられているようです。風呂場を見に行きます」
そう言うと、植村はまた、匍匐前進で這い始め、基礎のコンクリートの向こうに回り込み、主婦からは見えなくなった。
「奥さーん! お風呂はもっと凄いことになってます!」
「はい。どんなふうにですか?」
主婦は予想外の事態に、もう心配でならない。
「風呂場の方に来てください」
主婦はそう言われると、慌てて風呂場に向かう。その足音を床下で聞いている植村は、わざと床周辺の柱をバールでコンコンと叩く音を響かせるのだ。
コンコンコンコン・・・カンカンカン・・・ズンズンズン
植村はわざと鈍い音を出す。
「この辺がスカスカに食べられてます。もう柱の中は空洞のようです」
「えっ! 床抜けますか?」
「この風呂はコンクリートの基礎が支えてるんで、結構強度があるみたいです。この柱が崩れても、風呂が抜け落ちるようなことはないかも。でももう床の高さまで食べられてますね」