八九三の女
[夢]
社長が起きた時、少女の姿は既になかった
身体を起こし、覗く寝室の引き戸は開かれ布団は整えられている
当然、朝の八時を回れば学生は登校している
重役出勤の自分も十時には顔を出さないといけない
目覚まし音を止めた携帯電話を目の前のローテーブルに置き
再び、カウチソファに寝転がり大きく欠伸をする
いい匂いが鼻を抜ける
匂いに釣られて、台所に向かうと
ダイニングテーブルにお握りと卵焼き、伏せたお椀が置かれている
ガステーブルに目を遣ると小鍋があり蓋を持ち上げると
味噌の芳ばしい香りが広がり、いい匂いはコレだと合点がいく
普段、朝飯は食わない派だがスルー出来る気がしない
早速、点火し味噌汁を温める
具はシンプルに豆腐と若芽だ、最高だ
自分の腹が鳴る音を聞きながら社長はふと思う
久し振りに子どもの頃の夢を見た、気がする