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Cuttysark 『精霊』前/直後。

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 カティサークはお茶を飲み干してカップをレイラに渡して立ち上がった。
「ガイが呼んでましたよ」
(やっぱりな)
 どうせカティサークの姿が見えないことが不安になってとりあえず探しているのだろう。とはいえただ行動を取るのではなくてちゃんと理由を付けてくるから無碍にもできない。
 実のところ、多少鬱陶しいと感じることもあるがガイボルグが傍にいれば安心感は得られると自覚はしているから、嫌とは思わない。
「じゃぁ、レイラも少しはまじめに仕事しろよ」
 やれやれ、と伸びをしながら呼びに来た者の所へ足を踏み出したところ
「カティちゃん、待って」
 振り向くと上着のポケットより封筒を取り出して差し出してきた。
「これをガイに」
「…ガイに?分かった」
 レイラからガイボルグに用があるなんて珍しい。
 とりあえず受け取ると、手紙以外にも何か入っているようだった。
「忘れず渡してね」
 妙に神妙な雰囲気のレイラに圧されてしまう。
「わかった」
 再び別れの挨拶を告げるとガイボルグがいるというところへ向かった。
「…?」
 そんなカティサークを見送りながら、レイラは一瞬妙な気配を感じていた。


 巡回をおこないガイボルグの報告書を簡単に添削して自室に戻って。
 第一部隊の隊長はカティサークと入れ違いで夜勤だと出て行った。
 落ち着いたところで『調査隊』としての報告書を書き始める。
 なんだかんだと今日も慌しく過ごしたが、何か仕掛けられたような感じはしていない。気づかないところで何かあったのかもしれないとも思うが、ソレを深く考えられるほど体力も精神力も残ってはいなかった。
 そんな状態で何とか報告書だけ書いて、見直す。『第四部隊』隊長としての報告書がないだけマシだと思いながら、厄介な仕事がよく自分の下に回ってくると改めて溜息をつく。
 第四部隊の隊長になったことは後悔していない。
 自分がこの職位に付かなければ、実質第四部隊は解体されていた。数字が振られているから名前はなくならないが本質としての第四部隊はなくなっていただろう。
(今日も夜・・・)
 相手は夜に活動する。
 それまでの間仮眠でもとろうかと思ったのだが、今眠るとそのまま朝まで起きないような気がして眠る気にはならなかった。仕方が無いから剣の手入れでもしておくか、と改めて普段は腰に下げている剣を手に取る。
 幾種類かの剣を使っては見たが、これが一番性にあう形の剣だった。
 これの選ぶ時に一緒だったのも前第四部隊隊長だ。
 それ以外にもさまざまな思い出がある。
 何故だかカティサークは前第四部隊隊長に可愛がられていた。
 それは周囲も思っていただろうしカティサーク自身感じていた。
 故に不本意な噂まで流れたのだが、そんな雰囲気を乗り越えられたのも前第四部隊隊長を始めとする第一部隊隊長やガイボルグ達のお陰だった。
 抜き身の刀を見ながらそれからの事も思い出す。
 この地は、思い出を掘り返すのに十分な力を持っている。
 特に嫌な思い出が多い……
 ふと、窓の外を見ると大分丸くなってきた月が中天へと向っていくのがわかる頃だった。






「カティっっ!!」

「!」

 名前を呼ばれてハッと顔を上げた。
 ひんやりした空気が頬をなでる。
 部屋にいたはずなのだが…外だった。
 しかも駐屯地ではなく周囲は気に覆われていて……
「カティィィッッッッ!」
 もう一度名前を飛ばれて振り向こうとして…

ガチッ!

 体が先に動いていた。
 横の木陰から飛び出してきた人影の切り込む剣に対することができたのは運が良かったのだろう。相手は凄い殺気をみなぎらせて剣を振り下ろし、森の中という足場が悪いはずの場所で咄嗟に足を踏ん張って受ける。
 今まで意識が沈んでいたはずだったカティサーク自身、自ら不思議に思うほど体が軽く動いた。
 次の瞬間には間合いを取って、ジリジリと距離を量りながら、相手はこちらに向かってくる足音を感じて下がって行った。
 やっと、改めて、手の中の剣の存在に気付く。
 よくわからないが、多分剣の手入れをしている最中に寝入ってしまったのか意識をのっとられたのだろう。
「カティ、無事か?!」
 ガイボルグの声を聞きながら、魔力を遮断するペンダントが首からかかっていることを確認する。
 服の内側に首からさげていて、今もそこにある。
 ということは。
 今までは眠っていても何も起こらなかったが、魔力を遮断するペンダントの効力も効かないほどのことを何かされたのかもしれない。
 いつのまにか。
「おい、カティ!」
 後ろから肩を力強く掴まれて無理やり振り返らされる。
「あ、ごめん」
 顔を上げると、そこには少し眉をしかめたまごうことなきガイボルグがいた。
 目を見て、確かに本人だと確認するとホッと息をつく。
「大丈夫なのか?」
「…おかげさまで」
 本当に『おかげさま』だ。
 意識を取り戻さなかったらどうなっていたか……
「あれ、どうして此処にいるんだ?」
 巡回でもなかったはずだ。
 そもそも周囲に仲間らしい気配もないし、巡回ならばカティサーク自身がそのメンバーに含まれているはず。
「お前を追いかけてきたんだよ」
「俺を…?」
 その発言に違和感を感じる。
 確か…そう、確かこの呪いだかに精神を支配されてしまうと周囲から全く認識されなくなるのではなかっただろうか?
「俺、昨日巻かれたのも知らなかったけど、レイラが教えてくれたんだよ。お前が昼間俺に渡したじゃないか」
 そういってカティサークが持っているのと同じペンダントを引っ張り出す。ガイボルグは魔力が皆無と言っていいほどだから、効力もないと思ったのだがほかに使い方があったのか。
「まぁ、レイラもお前が心配だったんだよ。お前の持っているコレと俺のコレは対になってて、どっちかの持ち主がおかしな状態になるともう片方の持ち主に知らせるんだってさ。俺魔法使えないけれど、本当に知らせてきて驚いたぞ」
 さすがレイラ。
 全てを分かっていたらしい。
 ガイボルグが言うには此処は大分森の奥に進んだ辺りらしい。
「そこまで俺を泳がせておいて、分かったことは何か有った?」
 転んでもタダで起きては意味がない。
「あるわけ無いだろ」
「…だと思った」
 ガイボルグにそんな細かいことは期待しない。
 そんなことを話しながら、折角来たのだからと周囲を見回ってみる。
 歩きながらいくつか気づいたこともあった。
「歌が聞こえない…?」
 呟いてみても歌は聞こえなかった。
 案の定ガイボルグは何のことだか分からないようだったが。
 ただ、ペンダントを外す勇気まではなかった。
「さっき俺の歩き方夢遊病のようだと言ったよな?俺このあたり歩いていたか?」
 ふと見ると、『しっかりした足取り』ではない足跡が時折見え隠れする。
「『前へ』進んでいるんだから、来てないだろ」
「…って事は…」
 今日自分以外にも魔法に操られて此処に来た者がいるということではないだろうか。
 操られている状態ならば、情報を吐き出すまでは生かされるようだからもしかしたらまだ間に合うかもしれない。