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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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馨の結婚(第二部)(19~27)(完)

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第二十一話 彼女の生活













美鈴は、見た目通り、振る舞い通りの女性ではなかった。


今回の話は、美鈴の普段の生活と、馨の居ない間の話になるので、唐突ながら、三人称で進ませてほしい。


まず、美鈴の朝はとても早かった。五時半に起床するとすぐに勉強に取り掛かり、それから七時までは机の前から動かずに、学習と研究のためにせっせとシャープペンシルを走らせる。それから朝の勉強が済むと簡単に朝食を作り、食べてからは後片付けをし、学校に向かう。

学校でももちろん一日中勉強をして、夕暮れか夜に家に帰れば、またすぐに机に向かってテキスト、学術書、ノートやレポート用紙などを広げ、勉強を始める。夜の十時まではそこから動かずに没頭したあと、美鈴はやっと一息ついて、一杯の紅茶を入れる。

ゆっくりとお茶を飲むと、彼女はまた食事を作って食べ、後片付けをするとすぐに寝てしまう。一日中勉強漬けである。でも本人は「毎日が楽しい」と感じていた。常人離れした彼女の知的好奇心が彼女の生活のほとんどを占めていた。

それから彼女にはもう一つ珍しいところがあって、それは彼女が持つ、非常に豊かな感受性である。知的好奇心だって並では済まないのだが、美鈴は何事においても心揺れないことはほとんど無いほどだった。でも、馨と出会った頃には、それはしぼんでしまっていた。だから馨は、出会ったばかりの頃の美鈴を、「落ち着いていて真面目な学生だ」と思った。それはなぜなのか。


美鈴は、小学校に上がってからというもの、成績が優秀なことで周りから疎まれ、避けられ、痛めつけられてきた。中学、高校と学校が変わってもそれは変わらなかったので、いつの間にか彼女には、心を分かち合える友人は居なくなっていた。そんな日々を過ごしていると、彼女は思い出すのだった。彼女の感じやすい心に受けた侮辱の傷が、どれもこれも大きすぎて抱え切れなかった日々を。

彼女はそれに気づいた時、「このまま心を閉ざせば、きっと傷つくことも減る」と思い込もうとしてしまった。だから、馨が美鈴と出会った時、美鈴は確かに誠意と熱意に溢れた学生ではあったが、人間関係についてはまるで何も期待をしていなかった。

そんな美鈴も、馨の誠実さと愛情に触れ、少しずつ、「この人になら心を預けてもいいかもしれない」と感じるようになっていったのだ。馨もその変化には気づいたが、美鈴が心を閉ざしていた理由について、彼がどのくらい見極められていたかはわからない。

でも、馨にも確かにわかった。美鈴の心が前よりもしなやかに、そして瑞々しく潤って、素直に輝き出したのを。