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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第二部)(19~27)(完)

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母さんと父さんは僕に励ますような微笑みをくれてから、そして加賀谷さん夫婦はどこか申し訳なさそうに僕に会釈をして、ドアから出て行った。そして、三秒も経たないうちに、華蓮さんは僕をまた驚かせた。


「あなた、馬鹿馬鹿しいと思わないの?」


目の前に居る十九歳の女の子は、明らかに不満そうにそう言って、大きなため息を吐く。僕は急な彼女の言葉にびっくりしてしまって何も言えなかったけど、彼女はじれったそうにこう続けた。

「親同士が決めた会社のための結婚なんか、嫌だと思わないの?聞いてるの?」

「え、いえ…その…」

僕は、彼女の態度が想像とは全然違ったことで、一体なんと言えば正解なのかが、さっぱりわからなくなってしまった。でも、どうやら彼女は「僕を気に入っていない」どころか、この手段そのものを絶対に受け入れないつもりらしい。それなら、と、僕はテーブルに身を乗り出した。

「僕も、本当のことを言うと、今結婚をするわけにはいかないんです」

「そういう顔をしてたわね、私を見て」

「そうですか…」

そこで僕はちょっと恥ずかしくなった。どうやら僕より数段度胸が据わっていて、さらにとても目ざといらしい彼女の目に、その時の僕がどう映っていたのかと思うと。でも、僕は急に気持ちが軽くなって、勇気が出てきた。そこで彼女は少し首を低くして小さく低い声でこう言う。

「でも、うちの親は意見を変えないわよ。それに、私の話も聞かない。だから、これを駄目にしたいなら、あなたが本当の話をするしかないわ。素敵な彼女の話をね」

彼女は少しおかしそうな顔をして、そんなことを言った。そこで僕はまた現実と相対することになって、あっという間に気持ちが萎んでしまう。

「それから、一期で会社を立て直してみせる。大変ね、社長息子は」

「あんまり気軽に言えることじゃないですよ…」

僕はたった二言三言で、十九歳の子にやり込められてしまい、汗をかいて頭を抱えていた。彼女はちょっと面白そうに微笑んでいて、その時の顔は初めて素直に見えた。


「やるしかないわよ。男なら。それじゃあこれで話は終わりね。両親にはこう言っておくわ。“また次のお話で”ってね。その時までに、勇気を出して」


彼女はそう言うと、肩に掛けたショールを片手で押さえながら優雅に立ち上がり、ドアに向かって歩いていった。