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はじめてのミッション マゲーロ2

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 途中誰かに
「お、マゲーロ。さっきその子たち出かけていかなかったか?」と言われても、
「ちょっと忘れ物があってね」
と何食わぬ顔で切り抜けていた。
 再びチューブの中に入るとマゲーロは
 「これからあいつらが暮していた、『地上の記憶をなくしここで生まれたと思っている地球人の子供たち』の養い親のところへいくからな。あいつらと記憶交換して大体のところは分かるだろ。『さらわれてきた子供のふりをする地球人そっくりのエイリアンと入れ替わったホントの地球人』、というのがばれないようにうまくやってくれよ」
 わけのわからない説明をした。
 「えいりあんのちきゅうじんってなに?」
 弟が尋ねた。こんなややこしいことわかるわけないだろ。
 もっと簡単に、記憶をなくしているふりをする地球人のこども、でいいじゃん。
 実際地球人なんだし。
 
 
 3章
 
 チューブから出たところは明るい広間で、扉をあけると前に見たことのあるような機械が置いてある部屋だった。なんとかハカセに記憶を消されそうになったあの機械だ。
 ぼくたちのあからさまな警戒の色をみて、マゲーロが慌てていった。
 「ちがうよ、機械にかけようってんじゃない。ここを通らないと外にでられないんだよ。」
 そして目の前にある階段をとんとん登っていった。
 ついていくと、校舎の屋上にでるときのような踊り場があり、扉があった。
 そして、そこを開けてぼくたちが目にしたものは、目の前の大きな賽銭箱と鈴につながった紐。
 出てきた扉を振り返ると、そこは神社の社殿だった。格子の外から見ると、ふつうに祭壇にお供えものやご神体があるようにしか見えない。
 立体映像かなにかでカムフラージュしてるんだろう。
 どこにでもよく見かける小さなふつうの神社だった。
 木に囲まれた参道の石畳の先には薄明るい空と遠景の山並みが見える。
 ぼくも弟もあっけにとらえてお互いを見た。
 「おにいちゃん、ぼくたちはお外にでたの?」
 アキヒコが聞いたのは当然だろう。
 参道を歩いて鳥居をくぐるとそこは道路で、その向こうには田畑が広がり家々が点在する、ごく普通の日本の地方の風景があった。バス停もあり、遠くに町並みも見える。距離にして3キロくらいか。そこそこ大型の店なんかもありそうに見える。
 ていうか、実際ぼくたちの住んでいるところとほぼ同じに見えるから、ぼくたちの町をモデルにしたのかもしれない。
 とはいえ、ここは地下世界でぼくたちは入り口で縮小されているのだから、この景色がどんなに地上の風景と変わらなくても、実はジオラマみたいな縮小モデルなのだ。
 しかも外界と遮断されているはず。電車は通っていないようだが、道路は山の
 間に入っていくように見える。それから先はどうなってるんだろう。
 ぼくの疑問に答えるかのようにマゲーロが
 「ここにTとAの預けられている家がある。一応見てくれはもといた世界に似せて作られてるが、隣町とか隣の県とかはないんだ」
 と言った。
 「一番端まで行ったらどうなるの?行った人いないの?」
 「先端まで行くと、特殊な薬品の含まれた霧が出ていて意識に作用し、納得してしまうような記憶が植え付けられる。だからおまえら行くなよ。」
 「わかった」
 ぼくも弟も心してうなづいた。これはかなり大事なポイントだ。
 マゲーロは続けた。 
 「ここは地中のドームの一つであってどこまでいっても外はないんだ。他のエリアとつながるのはこのチューブのステーションだけ。ここの居住エリアは必ずここを通らないと入れないんだ。」
 「神社から出るとは思わなかったよ」
 「鎮守の森に囲まれた神社ってのは、人の目から隠せるし、誰でも出入りして不自然じゃないし、境内で子供らが遊ぶから子供がうろついていても変じゃないだろう。チューブのステーションにはうってつけなんだよ。おまえらエージェントたちからここらへんの記憶もらってないの?」
 「うん、暮してるところのことは分かったけど、出入り口がどうなってるとかはわからなかったな。アキヒコはどうだった?」
 「ここはカブトムシ取れるってよ。」
 それを聞いてマゲーロがため息をついた。
 「あいつらおまえたちの性格ごとコピーされてるからな。自分の興味あるところピンポイントでしか記憶してないな。」
 マゲーロが説明をつづけた。
 「気付かなかっただろうが、あの機械のある部屋で実は一瞬でスキャンされて通行許可がでるんだ。無関係の者は通れない仕組みになってる。一応オレが連れ歩く分にはOKなんだ。でも万が一オレが迎えにいけないときの用心にエージェントたちが持ってる通行証を偽造しておいたぞ。」
 鳥居の下で周囲を見渡してから、さりげなくペンダントのようなものを渡された。
 「これを身に着けていればチューブの出入り口は問題なく通過できるよ」
 「ありがとう」
 お礼をいってぼくたちはさっそくそれを首にかけた。
 「んじゃ、オレは戻るから。おまえら人間のふりをしてるTとAのふりをしてうまくやれよ」
 マゲーロはそういって神社のほうに戻っていった。
 
 
 4章
  エージェントTとAからの記憶で家の場所は分かっていたので、神社からでると迷うことなく行き着けた。
 本当の自宅とは違うが、どこにでもありそうな一軒家を前にして、ぼくたちはちょっとどきどきしながら玄関を開けた。
 「ただいまあ」
 するとぼくたちのとはちょっと違う、人間を演じているエイリアンのここでのお母さんがでてきて
 「あら、おかえり。意外と早かったのね。マゲーロの用事は済んだの?」
と言った。
マゲーロたちの事情は大体察しているから疑問にも思わないのだろう。
 
 晩ご飯はから揚げや豆腐の味噌汁といった、今まで家で食べていたようなごく普通のものだった。たぶん一応人間用の素材で作られるらしい。が、手に入りにくいものが何から作られているか、あまり考えないことにした。味に問題なければいいんだから。
 じつはそこの世界にもちゃんと学校があり、ぼくたちは結局普段と同じ状況に
なった。授業もあるし、宿題も出るし、なんだかちっとも遊びに来た気がしない。
 ただ勉強してる内容や進み具合が、本来のものとちょっと違っていた。
一応エージェントたちの記憶があるからついてはいけたが、友達もちがうし、妙に混乱する。しかも全校生徒は十数人に満たない。そりゃそうだろう。限られたエリアでそうしょっちゅう神隠しがあったらたまらない。
 とはいえ、巧妙に入れ替わっていることを考えたら意外と多いのかも。
アキヒコに聞いたところでは幼稚園は7人しかいないらしい。
それでも、みんなは変だと思っていないとのこと。
 
 テレビもあって地上と同じものが見れるようなのだが、じゃあ番組の観覧に行きたいから渋谷に行こう、というわけにはいかないはずだ。バスに乗って壁までいくと集団催眠にでもかけられるのかもしれない。
 そもそも、番組が微妙に違うような気がする。なにか細工してサブリミナル効果のある電波にでもなってるんじゃなかろうか。
 そう気付いたので、テレビもあまり見ないようにした。