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小さなみどりの宇宙人 マゲーロ1

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 マゲーロは不思議そうな顔してぼくを見た。
 「そうだよ、機械が故障だってさ。直り次第消されるんだってさ」
 「故障なんて聞いたこともないけど」
 「修理してるそうだけど、今、ぼくたちはどうせそっくりなんだから、入れ替わったってわかんないだろう、という案を話し合ってたんだ。弟がアレ飲み込んで信号出せてるし。マゲーロ、おまえは関係ないだろ。だから協力しろよ。」
 「うーん、確かに入れ替わったところで誰も気付かないかもしれない」
 「ていうか、今、修理が完了してぼくたちが記憶消されるのをどうやって回避するかが先決なんだ」
 「そもそもなんで故障したんだ?」
 「もしかしてあれのせいかな」
 「何?」
 ぼくがアキヒコに「ほら、あれ出して」とつつくと、弟はくすねた部品をポケットから取り出して得意げに見せた。
 
 「あれ、これって記憶消去用のチップだ」
 やっぱり、なにか重要なものだったんだ。
 「いつのまにこんなもん盗んだんだよ。手癖の悪いチビだなあ。これがなきゃ記憶消去はできないぜ」
 「じゃこれを壊したらぼくらは記憶消えない?」
 「それが原因と分かれば他からもってくるだろうよ」
 「そうかあ」
 「そういや、コピーくんたちってなんにでも擬態できるんだよね。いっそ機械に擬態できないの?」
 「見た目は出来ても中の機能はムリだよ。それができれば先祖は宇宙船に変身して故郷に帰ってただろが」
 「だったらさ、見た目だけ、これになるとか?」
 コピータカに見せてみた。
 「あー、それだったら、こいつも持ってたぜ」
 コピータカがコピーアキを呼んだ。
 コピーアキがポケットから出したものはそっくり同じだった。
 「機械に入れられる前にポケットに入ってただろ。ポケットの中身ごとコピーされてるんだ。ただし、見た目だけ。中身は空っぽ」
 そいつはちょっとつかえるんじゃないか!
 「このニセモノを機械に戻しておけばどう?」

7章
 その役目はマゲーロに任された。彼のミッションは備品を運んだことを報告にあえてあの部屋に行ってもらいスキをみてチップを戻すこと。
 首尾を報告に必ずこの部屋に戻ること。

 「分かったよ、うまくやるから、待ってろ」
 ドアを開け再び鍵を閉め、マゲーロはぼくたちと接触してないふりをしてでていった。

 あのマゲーロを信用できるかって?
 もちろん怪しいと思う。
 だから、コピータカに外見をマゲーロに擬態して行ってもらったのさ。彼は性格ごとぼくにコピーされているから信頼できるだろう。なぜならぼくは自分自身を信じているから。
 マゲーロ本人はぼくたちに囲まれて床に座らされている。
 「あのさ、マゲーロ、もっと聞きたいことがあるんだけどさ」
 「なんすか」
 信用されなかったのでちょっとふてくされている。
 「記憶消された子供ってその後どうなるのさ?」
 気になるよなあ。
 「まあ、最初からここの住人と思ってここで暮していくさ」
 「自分を宇宙人と思って?」
 「何も気付いてないと思うよ。」
 「だってマゲーロみたいのにであったら妙だと思わない?ふつー」
 「このコロニーもそれなりの規模があるから、そういう神隠し子供専用エリアが別に作られてるんだよ」
 「誰かに出会わなくても行き止まりがどこかにあるんじゃないの?」
 「エリア全体がかなり広いからね。移動にチューブを使うような遠くにいくにしても、地上でだって電車や車を使うだろ。ずっと暮してればこんなもんだと思うさ。地球の大都市に暮らすのと変わらないよ。地下ではあるが人工太陽もあって昼と夜も作って地上と変わらない環境を作ってあるし、養父母も例の擬態できるやつが人間を演じてるからここから記憶が始まる子供自身はそこで生まれ育っていると思うはずだよ。」
 「おまえ最初から仕組んでた?わざと姿をちらつかせたりして」
 「諜報活動はしていたけど、あのチビに見られたのはうっかりミスだ」
 ちょうどその時、マゲーロになりかわってたコピータカが戻ってきた。

 「おい、うまいことやったぜ」
 彼はマゲーロの顔でウインクしてみせた。
 「よっしゃー」
 ぼくはアキヒコと顔を見合わせ親指を立てた。
 「さて、はやいとこ君にならないとな」
 コピーマゲーロはぼくの手を取り、ぼくの外見の情報が複写されるのを待つ。やがてぼくと瓜二つになったコピータカは
 「おい、マゲーロ、ここに居るのがもろに分かるとまずいぞ。トイレにでも隠れてろよ」とマゲーロをトイレに追いやった。
 「どうせオレは信用されてないよ」

8章
 ほどなく、ドアをガチャガチャやる音が聞こえ、先ほどのハカセが顔をだした。
 「なんだかわからんが、唐突に直ったから来い」
 ぼくらを先導しながら、
 「まさかとは思うが、もしかしておまえたち何かいじってないか?」
と聞いた。
 ぼくたちは(コピー君も含め)いっせいに首を振って否定した。
 当然だろう。
 ハカセは疑わしそうな目つきでぼくらを見たが黙って歩いていった。
 その時コピータカが何かにけつまづいて思い切り転んだ。
 「いってえ」
 なかなか起きないのでハカセが手を貸して引っ張ったが、コピータカは嫌がるそぶりをして引っ張り返し、なかなか立ち上がろうとしなかった。
 「何を抵抗しておるのじゃ。逃げようとしても無駄だ」
 「わかってるよ」
 ようやく立ち上がりざま、コピータカはぼくのほうをみてウインクした。
 一連の動作がどうにもわざとらしい。なにか企んでるな。こいつ。
 
 ぼくらは先ほどの部屋に戻ってきた。
 「おまえたち、さっきみたいにここに座りなさい」
とハカセがカプセルのふたを開けたとき、コピータカがハカセを思い切り突き飛ばしてカプセルに押し込み、固定ベルトをかけてふたを閉めてしまった。
 「こらー、何をするんだ、だせー」
 中でわめいているハカセを無視して、コピータカは
 「おい、本物出して」
 すばやくぼくにささやいた。
 ぼくはコピー君のいわんとすることにぴんときたので、即座にポケットから先ほどのチップを取り出し、彼に手渡した。
 コピータカは非常に滑らかな動作でチップを入れ替え、機械を操作した。
さっきみたいに機械はウィーンとうなりだし、光が点滅した。
わめき続けていたハカセもぱたりと口をつぐんだ。
 「しばらくぼーっとしてると思うよ」
 コピー君が言った。
 「どうして動かし方がわかったの?」
 「さっきこいつに触れたときに、こいつの記憶を自分にコピーした」
 「なるほどねえ。で、このハカセは自分が誰かも忘れるの?」
 「いや、ここ2、3時間分があやふやになるだけだよ。そういうふうに設定したから」
 「つまり、機械は正常に動いてぼくたちは滞りなく処理されている、と思ってるってことだね」
 「そういうこと」
 コピー君あったまいいなあ。
 
 9章
 これでぼくたちが記憶をなくしていない、ということを知られずに、ぼくたちが入れ替わるのを入れ替わっても、誰も不審に思わないってことだね。
 「そうだ、マゲーロのやつどうしよう。あいつ信用できないよね」
 ぼくは気になったが、