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小さなみどりの宇宙人 マゲーロ1

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 覗き込むとなにやらラップで包装された木の実のようなものや果物のようなものが入っていた。弟はすでに包装を破ってクッキーみたいなものにかじりついている。ぼくもピンク色のボールみたいなやつを食べてみた。しいて言えばさくらんぼの大きいのとでもいうべきか。ぼくたちの今のサイズを考えると、すごく小さな木の実でも顔より大きくなりそうだから、これはやっぱり自然のものじゃなくてなにか加工食品なんだろう。
 材質不明な筒型の入れ物には水が入っていた。
 ここはイザという時の避難所で保存食料が備蓄されてるんだろうか。

6章
 その時ドアが開いてぼくらとそっくりの二人の子供が入ってきた。
 さっき隣のカプセルでできあがってたコピーらしい。
 「まだ時間がかかるから待てとさ」
 ぼくそっくりの少年が言った。
 「ふつう君らとぼくらが接触することはないんだけどね。特例だ」
 コピータカアキはそう言って棚の方に歩いてきて箱をごそごそあさった。
 
 「なんだ、人間仕様ばっかだ。ぼくらの食べもんはないなあ。ま、体が人間だからな」
 ぶつぶつ言いながらも、なにやら口に入れていた。
 コピーアキヒコのほうはとっくに箱に取り付いてもそもそやっていたが、
 「そうだ、おにいちゃん、さっきこれゲットしたの」
とポケットから何かだしてコピータカアキに見せてにやついている。性格までコピーされてるんだ。ぼくはすっかり感心してしまった。
 「あ、あのさ、君たちはぼくたちとなにもかも同じなの?」
 ぼくはもう一人のぼくに声をかけてみた。
 「そうだね。体の情報も記憶も君からコピーされてるんだから。ただ、ぼくらはコピーされる以前の記憶も持つけどね」
 もう一人のぼくが答えた。
 「つまり、立体プリンターみたいなもの?機械なの?材料はなに?」
 「材料とかいわれたくないな。ぼくらはそもそもれっきとした生命体であって、いかなるものにも擬態できる性質を持つだけだ。」
 「そういえばさっきマゲーロもそんなこと言ってたなあ。じゃきみも宇宙人の一人なわけ?」
 「ま、きみらから見ればそういこと。ぼくらの遠い祖先はどこかの星の、擬態してた生物とともにやってきて地球に不時着、この星のあらゆるものに姿を変えて生き延びてきた。そして今、その性質を情報収集のために生かして、このコロニーで他の連中と共存しているわけ」
 「君はなんでそういう詳しいことぼくらに教えてくれるの?マゲーロもカジ
 ーも何も答えてくれなかったんだけど」
 「きみらはどうせマシンの修理が済めば記憶消されんだから、何喋ってもいいんじゃね」
 やっぱそうか。なら何でも喋るんだな。
 「あの、そもそもどうしてぼくらはここにいて、君たちはなんのためにぼくらになってるのかな?」
 一番の疑問をぶつけてみた。
 コピータカアキはやれやれ、とため息をつきながら部屋の壁にそって歩き出した。アキヒコはコピーアキヒコと仲良く遊んでいる。
 「わかんない?きみたちがここにいるということは、きみたちの代わりにきみたちの家に帰るものがいないと、上では大ごとになっちゃうでしょ。昔は神隠し、で通ったみたいだけど、今はややこしいからね」
 「ぼくたちがここで滞在してる間の身代わり的なことしてくれるの?」
 「滞在というか永住だろうけど」
 「え?どういう意味?」
 「君たちにコピーされたぼくたちが上で暮らし、定期的に上の情報をここに伝える。君らは記憶を消去され、このコロニーで一生飼い殺しにされる。そういう意味だよ。」
 「ええっ。一生ここにいるなんて嫌だよ。」
 それを聞いていたアキヒコが突如泣き出した。
 「うわーん、やだやだー。ママにあえないなんてやだー。帰りたいよー。」
 ぼくだってそうだよ。
 コピーたちは気の毒そうにぼくらを見ていたが何も言わなかった。
 気の毒な相手にぼくはこんな顔をしてみせてたのか。
 見れば見るほど自分そっくりというのは鏡を見るようでなんとも不思議だ。
 その時、ぼくはひらめいたものがあった。
 「あのさ、ぼくらそっくりなわけでしょ。入れ替わるのを入れ替わってもわかないんじゃないかな」
 「ムリだよ。地上の偵察が遂行されないとバレるもの。ぼくらだってここで君らのふりして閉じ込められてるのはいやだよ」
 「ぼくらが代わりに情報収集して報告するってのはどう?」
 「識別信号を出せるここの住人と一緒じゃないと、きみらは自由にここに出入りできないだろうが。」
 そうか、ナイスアイデアだと思ったんだけど。
 「この子、信号だしてるよ、おにいちゃん」
 コピーアキヒコが唐突に言った
 「せっせっせのよいよいよい」で遊んでいた幼稚園児たちは、ぼくたちの会話を聞いていたらしい。
 コピータカアキがチビたちのほうに振りむき、
 「え、マジ?」
駆け寄ってアキヒコの手をとった。
 「ほんとだ。なんでだ?」
 コピータカは振り向いてぼくの手をとった。
 「なんなんだよ」
 「接触すると相手の情報がわかんの」
そういって手を握ると
 「こいつはでてないよ。ふつーに人間だ」
 「あのー、その信号って地上との出入り口を通る識別信号ってやつ?」
 「そうだよ」
 「その信号でてるものと一緒なら通れちゃうんだよね」
 「そう」
 「ならさ、ぼくとアキヒコが一緒なら、出入り自由だよね」
 「そういうことになるかな」
 「じゃあ、ぼくたちは定期的に行き来して、君たちと交替してもわかんなくない?」
 「まあ、そういうことになるねえ」
 「面白いと思わない?」
 コピータカアキはここでちょっと考えてからにんまりした。
 「だねえ」
 ぼくと同じ性格なら絶対ノル。そう思った。

 その時、ドアががちゃがちゃいってバタンと開き、棚にあったような箱を山にして抱えた誰かが入ってきた。
 「あー、重たい。補充なんかいつでもいいのに」
 ぶつくさいいながらそいつは箱を床に下ろして立ち上がり、初めてぼくらの存在に気付いてぎょっとして固まった。
 「ああっ、おまえマゲーロじゃん」
 
 ぼくもびっくりだ。
 及び腰になったマゲーロが逃げそうだったのでぼくらは(コピーたちも)ダッシュしてドアの前に陣取った。

 「おい、マゲーロ。おまえ一体どういうつもりでぼくたちを連れてきたんだよ。おまえのせいでとんでもないことになってるじゃん」
 ぼくは詰め寄った。
 「いや、その、申し訳ないとは思うけど、オレもここで生きていくにはそれなりにやらされる仕事があるんだ」
 コピータカアキも言いたいことがあるのか身を乗り出し
 「ふうん、子供だまくらかして引っ張り込むだけで楽でいいよねえ。こちとら人間に擬態して諜報活動するんだぞ」
 けんか腰に言った。
 「そちらさんの苦労は分かるが、きみたちはどのみち何かに擬態しないと形が保てないだろうが。フラスコの中のアメーバ状態で過ごすよりマシだろうに」
 「それもそうなんだけどさあ」
 コピータカは考え込んでいる。

 「あの、そういうのはどうでもいいからさ、ぼくたちはここで飼い殺しは嫌なんだよ。脱出して家に帰りたいんだけど」
 ぼくはさえぎった。
 「あれ、そういえばおまえ記憶あるわけ?」