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小さなみどりの宇宙人 マゲーロ1

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少し白っぽいそいつもマントがないだけで隊長と似たような装備を持っていた。
 「ついてこいよ」
 ドアをくぐって歩き出した。
 「ねえ、ぼくたちをどうするのさ」
 「命に別状はない。黙ってついてくればいい」
 「そんなこと言われても、わけわかんないままじゃいやだよ」
 「潜入用ダミーにコピーするからおまえらをちょいとスキャンするだけだ」
 「なにそれ。潜入って?スキャンってなにするの?」
 「黙れといってるのがわからないのか」
とそいつは銃でぼくらを脅そうとホルスターに手をかけたが、そこに何もなかったためぎょっとして立ち止まった。
 その時、アキヒコが
 「これ本物?ちょーかっこよくね」
と振り回しているものがあった。
 あいつの銃だ。
 いつの間に?
 「なかなかやるじゃないか。でも危ないかからお兄ちゃんに貸してな」
 すかさずぼくは弟の手から武器をとってそいつに向けながら弟の手をつかんで後ずさった。
 「おい、バカなまねはやめとけ」
 やつが一歩近づこうとしたので、ぼくらはとっさに手近にあったドアを開け飛び込んだ。
 そこは長い廊下だった。左右にドアが並んでいる。
 とりあえず走った。
 「おい、待て」
 当然追いかけてくる。
 ぼくらは走って適当なドアを開け飛び込んだ。
 中央にテーブルがあり、奥のほうにキャビネットのようなものがあるだけの部屋だった。かくれるところもない。

 そいつも続いて飛び込んできょろきょろした。
 どうしようもなかったぼくらはドアの裏に突っ立ったまま動いていなかったのだ。
 そいつは部屋に入ると見回しながら奥へ進んだ。
 その隙に、ぼくらはそうっとドアの外にでて、別のドアを開けて入った。
そこは奥にもう一つドアがあったのでそこをあけるとまた長い廊下だった。
ここは一体どうなってるんだろう。まるで迷路だ。アキヒコとぼくは顔を見合わせてため息をついた。
 途中まですすんでそこにあるドアを開けて入ってみる。
 そこも廊下だった。もう完全にわけが分からない。
 とりあえず突き当たりまで歩いてみたら廊下は左右に分かれており、右のほうにかすかに人声らしきものが聞こえた。
 このまま迷子になって餓死するよりつかまったほうがマシかもしれない。
気配のあるほうへすすんでみた。
 するとそこにあったドアがいきなり開いて誰かぶつかってきた。
 「わあっ」
 「きゃっ」
 ぼくはびっくりしてしりもちをついた拍子に武器を取り落とした。
 「手間取らせるなよ」
 落ち着いて銃を拾った相手はさっき振り切ったはずのカジーとかいう兵士だった。
 結局ぼくらは迷子になってどうどうめぐりをしていたらしい。
なんだなんだ、なんてこったい。

5章
 カジーがぼくらを両手でそれぞれがっちりつかまえ、ひきずっていった部屋はやたらとたくさんの機械の並んだ病院のようなところだった。
どちらかというと実験室とかオペ室のような感じで、等身大のカプセル状のものがいくつも並んでいた。
 「人間の子供2名、連れてきました」
 「はいよ、ごくろうさん」
 頭のてっぺんに輪になった白髪の生えた、(カッパ系とカエル系のハーフなんだろうな)いかにもマンガに出てきそうな年寄り博士っぽいのが現れ
 「はい、あんたこっち、そっちのチビさんはあっちだ」
 ぼくらはそのじいさんとカジーにそれぞれ引っ張られ、カプセル状の座席に押し込まれるや、ジェットコースターのような安全装置で固定された。
 「なにするんだよー」
 ぼくはじいさんに問いかけた。
 「大丈夫、あんたらのコピーを作るだけだ。痛くもかゆくもないから」
そういうとなにかを操作し
 「コピーって何?なんで?」
 と聞きかけたところに、シューッとカプセルのふたがスライドし、閉められてしまった。
 なにがなんだかよくわからないままに、機械がウィーンとうなりだし、カプセルの中で光が回転し始めた。すると隣の空のカプセルにも光が渦巻き始めた。しばらくして音が静まり光も落ち着いてくると、隣のカプセルにはもう一人のぼくが入っていた。
 コピーってこういうこと?
 立体的なコピーができるのか。ちょっと面白いな。
 なんて脳てんきなことを考えている場合じゃなかった。
 「よし、できたぞ。次、本体の全記憶消去にうつる」
とハカセらしきやつが言っているのがカプセル越しに聞こえ、ぼくは一気に血の気が引いてきた。
え?どういうこと。やばいよ。すべての記憶を消されるってことは自分が誰かも分からなくなるってことだろ。そこにいるアキヒコも知らない子になって、家族との思い出も友達との思い出もなにもなくなって白紙になるってことだよね。ぼくたちこれで人生終わりってことじゃん。なんてこった。
 ぼくは焦りに焦ってもがいてみた。
 しかしどんなに焦ってもここに固定されて動くことも出来ず、どうしようもない。
 ぼくは短いながらもこれまでの人生の記憶が、走馬灯のようにかけめぐりだした。
 「あれ、変だな。うまく操作できないぞ」
 博士があれこれいじっている。
 「調子が悪いな、仕方ない、修理してからだ。おまえらちょっと出ろ」
 ラッキーなことにふたがスライドして開き、ぼくたちがカプセルから出されることになった。ぼくはほっとして放心状態だったが、アキヒコはあっという間に走り出て、自分のそっくりさんのいるカプセルにとりついてしげしげと眺めている。
 興味のあることに猪突猛進するあいつは、この状況がどんなにやばいことか、理解できてないな。

 「時間がかかりそうだ。とりあえずこいつらをどこかに閉じ込めておいてくれないか」
 ハカセはカジーに言いつけた。
 そこでまたガッシリと腕をつかまれ、ぼくらは引きずられるように廊下を歩かされ、別の部屋に連れて行かれた。
 「トイレも食料もある。ここでしばらく待ってろ」カジーは言い置いてドアをガチャンと閉めた。
 駆け寄って確かめたが、やはり鍵がかけられていた。
 そこは病院の待合室のような部屋だった。殺風景な四角い部屋で、壁の棚には箱に入ったものがたくさん並んでおり、椅子がいくつか並んだ奥のほうにはトイレのドアらしきものがあった。

 その時、それまでやけにおとなしかったアキヒコがにやにやしながら寄ってきた。
 「おにいちゃん、これなんだろ」
と手を開いて見せた。
 何かはぼくにも分からなかったが、どうもなにかの機械の部品かメモリーカードみたいなものか何かである。
 「おまえ、これいつどこで?」
 「さっきジェットコースターみたいのに乗せられるとき。そこの真ん中の機械にあったの」
 なんでもかんでもすぐ見つけてはいじくる弟の習性は、こんな場所でも発揮されていたらしい。先ほどの機械の不調がこの部品のせいだとしたら、アキヒコのおかげでちょっと時間稼ぎが出来たわけだ。
 ただしほんのちょっとだけど。

 アキヒコは早速棚においてあった箱をいじくっていた。どうやら中には食べ物が入っているらしい。