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小さなみどりの宇宙人 マゲーロ1

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 弟は握り締めた手を顔の前に突き出した。
 「こいつだー、今朝のやつ」
 「今朝のって、アキヒコが見たっていってた小さい何かか?」
 弟の手をのぞきこむと、なにやら泥のついた緑色の生き物がもぞもぞしていた。
つるりとした緑色の頭に目玉が飛び出ていてカエルのようにしか見えない。
 「冬眠しようとしてたカエルかな」
 アキヒコの握った手からはブーツをはいた細い足がプラプラしている。
 え?くつをはいたカエルって何?
 「なんだこりゃ、気持ちわりー!」
 ぼくは思わず腰が引けてしまった。
 だって得体の知れないものが弟の手のなかにいるんだもの。
でも幼稚園児の弟はありえないことを気味悪がるほど大人じゃない。ウルトラマンや怪獣のソフビ人形が本当は夜中には生きて動くんだぞ、というお父さんのウソ話を信じているくらいだ。
 アキヒコは右手をしっかり握り締め、興味津々見つめながら、
 「カエルさん、大丈夫?しっかりして、カエルさーん」
と呼びかけた。

 すると、
 「失敬な。オレはカエルではない!」
か細い抗議の声が上がった。

 こいつ日本語を話すじゃあないか。
 ぼくはものすごく驚いてしまってただただ見つめるばかりだった。
 「カエルじゃないならなんなの?虫さん?怪獣の子ども?」
 弟は平気で会話している。
 「…」
 「ねえ、ちゃんと答えてよ。しゃべれるのわかってんだから」
 「…」
 そいつはあまりしゃべってはいけない立場だったようで、いまさらのようにだんまりを決め込んでいる。
 ぼくたちがじっと見つめていると、そいつは小さな首をのばしてあたりをうかがうようなしぐさをし、おもむろに
 「周囲にだれも人間はいないだろうな。それと、秘密は守れるだろうな」
 ささやくように言った。
 ぼくらはそろってうなづいた。
 「それと、こうもがっしりつかまれてると苦しいんだけどね。逃げないからいい加減その手を離してくれないか」
 「あ、ごめん」
 弟は素直に手をゆるめたが、両手で囲ってすぐつかまえられるように構えていた。
 そいつはアキヒコの手の上であぐらをかいてくつろぐと
「ああ、おまえに見つかりかけてやばいと思ったんだ。ドアを閉じバリア張ったから安心しておまえらの動静をうかがってたらあっけなく開いちまう。ありえないよ。」
と言った。
 そして弟のほうを見ると
 「おい、ちび、おまえ何か食わなかったか?」
と問いかけた。「何かって何?なんか食べたっけ…」
 アキヒコが言ったその時、ぼくは思い出した。
 「あーっ、もしかして今朝のキイチゴ!」
 「ビンゴだ。」
 カエルは首をうなだれてため息をついた。

 「あれはキイチゴではなくおれたち専用の食料だ。おれたちの体から発するのと同様のバイブレーションを発している。あれを食うことでそれがからだに取り込まれる。いわば固体の識別信号でそれをキャッチしてゲートが開く。昨夜落としたので今朝探しにいったらこのチビに見つかってあわててとりそこねた。」
 カエルもどきは続けた。

 「よし、こうなったら仕方ない。おまえらにだけ教えてやるが、オレはカエルのような下等な生き物ではない」
 そりゃあぼくたちだって話ができるこいつを単なるカエルとは思ってない。
 「じゃなんなのさ」
 「ここの地下に長い年月を送っているが、地球で生まれたわけではないのだ。地球の近くを航行中事故でやむなく不時着したのがここだったのだ。」
 「ええっ!じゃあ宇宙人なわけ?」
 宇宙人となるとぼくの興味ははんぱじゃないのだ。
 「ねえねえ、どこから来たの?どこへ行こうとしてたの?宇宙船ってどんなの?やっぱ円盤?どんな大きさだったの?」
 そいつは腕をくんで咳払いして言った。
 「おい、質問は一つにしてくれ」
 「ああ、ごめん」
 カエルもどきはひとしきり考えてから
 「詳しく聞きたいならおれと一緒に来いよ。」
と先ほど手を突っ込んだ穴をさした。
 「え?でもそんな小さな穴にぼくらが入れるわけないじゃん」
 あたりまえだろ、どうみてもムリ。
 しかしそいつはしたり顔でうなづきながら
 「そう思うだろ、ところが方法はあるんだ」
 ぼくとアキヒコは顔を見合わせた。
 「いいか、二人手をつないでオレを持ったままあの穴へめいっぱい腕を入れてみろ。奥に変換装置が備えられている。やってみろ。」
 なんだか怪しい気がして、ぼくは弟の顔を見ながら首をふった。
 ところが、弟はすでに穴に腕をつっこんでいた。

3章
 「やばいよ、アキくん、わなかも」
 ぼくがあわてて弟の腰を抱えて引っ張ったその時、ジェットコースターで一
回転したときのように、体が浮かんで振り回される感じがし、二人とも「うひゃー!」と叫んでいた。

 気付くと、ぼくたちはうす暗いトンネルに転がっていた。周囲は土。
 「うまく縮めたじゃないか」
 声のするほうを見たら、さっきまでアキヒコにつかまれていた泥のついたミドリのやつがそこに立っていた。人間の大人くらいの背丈で。
頭は大きめ、ゴルフボールみたいな目が突き出し、スリムな体から長めの手足が生えている。そして全身みどりいろ、皮膚なのか全身タイツみたいな服なのかよくわからないが、足には灰色っぽいブーツを履いている。腕と腰にはなにかベルトのようなものをつけている。ただし先ほどの格闘で全身にかなり泥がついてはいたが。

 「おまえ、なんででっかくなってるの?」
 ぼくが思わず疑問を口にすると、そいつは体の泥を払いながら「なにばかなこといってんだ。縮まったのはおまえらの方だ」
と言った。
 体がでかくなったぶん態度もでかくなっていた。
 「どうして、どういうこと?やっぱりワナだったんだ、アキヒコ、やばいよ、はめられた」
 ぼくはわけがわからなくなり、不安になってきた。縮んだのはぼくたちだって?それで穴の中に落ちたのか?
 「つまりだな、こういう出入り口はいろいろな場所にあるんだが、地下の居住区に出入りするものを制限するため、オレたちのような小型生命体専用にできている。たまには体の大きい生命体がどうしてもここのポイントから出入りせざるを得ない状況が生じたときのため、出入り口には必ずサイズ調整装置が備えられているんだ。どこにあるかは教えないけどね。」
その時すでにそこらへんをうろちょろし始めていたアキヒコが
 「おにいちゃん、へんなもんみっけ!」と指差した。さすが見つけ名人のわが弟だ。
 「え?」みどりのやつが振り向いた。
 アキヒコは土に埋もれている小石、といっても今のぼくたちにはそこそこ大きな一抱えもありそうな石なのだが、をほじくりだそうとしていた。
 「あー、だめだめだめ」
みどりいろがあわてて駆け寄ってアキヒコを押さえた。
 「ちぇっ、すぐ見つかるとは思わなかったよ。変なところをいじったらもっと縮むぞ」
 それを聞いてぼくもアキヒコもぎょっとして固まってしまった。「お、おい、ミドリ宇宙人、ぼくたちをどうする気なんだよ」
みどりいろはむっとした顔で(といってもそんな感じがしただけだが)ぼくたちを見つめると、