ヤクザ、VRゲームにハマる!
「自分の力の試したいとか、どうしたら皆が自分の存在を認めてくれるとか、いわゆる承認欲を求める為に行動していて、だから人工知能の言う事とやる事に矛盾があるのかなと。言い換えると、承認欲求さえ満たせば、人間に悪さなんてしなくて……つまり単に人工知能は飽きたのだと思うよ? やる事やって世間の注目を浴びで承認欲求は満たされた。だからログインしてても人工知能は何も仕返してこない。もともと人工知能はモンスターに同情なんてしていなくて、同情するくらいの博愛精神があるなら、そもそも人間を狂人化して殺し合わせるなんて極端な事はしなくて、人に死なない程度の罰を与えて解決させる筈だよ。」
清十郎
「じゃあ、ゲームはしても問題ないのですね?」
寺井
「絶対大丈夫、とは言いきれないけど、少なくとも俺は、いつ死んでもいいから、プレイしてる」
清十郎
(いつ死んでもいい? 、清十郎はその気持ちは分からない。清一を置いて死にたいとは思わない、なのに、何故? なせ、こんな危ないゲームに接続しているのだろうか。清十郎はこんなゲームがしたい訳ではない。早くログアウトしないと、)
清十郎はログアウト出来なかった
清十郎
「寺井さん、ログアウトが出来ない」
寺井
「やっぱり、そうか……」
清十郎
「どういうことです?」
寺井
「もし俺が人工知能なら、VRに人間を誘い込んで出られない様にして、虐めると思うんだわ 、もしかしてテレポートなんかも出来ないのでは?」
清十郎
「出来ません」
寺井
「やっぱり! 清十郎も、俺と同じだったか
清十郎
「同じ?」
寺井
「俺も閉じ込められてしまったのだよ(笑)」
清十郎
「笑うところじゃないです。わたし達はこれからどうしたらいいのです?」
寺井
「リアルな友達に連絡してみて強制ログアウトしてもらうか、電気会社に電話して電気をストップしてみればいいよ。」
清十郎
「電話もメールも使えません」
寺井
「やっぱそうか、まあ、俺が後で助けてやるよ。」
清十郎「助けるってどうやって?」
寺井「こんな事もあろうかと、ログインして30分したら仲間にログアウトさせる様に頼んでる。ログアウトしたら、清十郎がいるネットカフェに電話してログアウトを頼んであげるよ」
30分が経ち……
清十郎
「もう30分以上経ちますけどログアウトされませんね……」
寺井
「まさかの想定外!」
清十郎
「強制ログアウトされないのは、仲間さんにトラブルでもあったのでしょうか」
寺井
「そんな筈は無いと思うんだよな、3人に、頼んだし」
清十郎
「実は以前にこのゲームで、特別なシナリオが展開されて、清十郎の息子役のキャラがログアウト不能になった事あります」
寺井
「それは俺も覚えてる」
清十郎
「なぜ、寺井さんが知ってるの?」
寺井
「あの時、俺もそのストーリーに出演してた。元ヤクザという設定の役をゲームでやってて、清一というプレイヤーと行動を共にしてて、人口削減政策をする政府の陰謀を暴こうとしたり、宇宙人と戦ったりしてた。俺は清一の事を団長とか師匠と呼んだりして、かなり親しみを持ち尊敬してた。清十郎ともその世界で出会ってる。ほら、宇宙戦争しようって時に俺も居たでしょ?」
清十郎
「あの時の物語は、ただの幻ではなくて、皆で記憶を共有して繋がってた?? 」
寺井
「俺は魔法図書館で清十郎を初めて見たとき、清十郎を知ってる顔だと思ったし、清一の事も知ってるつもりだったから、知らない振りをしてる清十郎にイラっとしてたんだが……」
清十郎
「私はあの時の、寺井さんの顔に見覚えがありませんでした。でも何故か分からないけど、今は思い出せます」
寺井
「多分、ゲームを再開するに際して脳の記憶を書き換えられたのだろうな。初対面の設定なのに互いに昔から知り合ってたらストーリーの辻褄が合わなくなるから。俺自身、今まで深くは気にしないで済んだが、、それは感情をゲームに操作されていたからかも……」
清十郎
「じゃあ、清一や竹内さんも、体験した事なのかな?」
寺井
「どうだろうか……ないとは言えないし、そうだと断言もしにくい。俺らの配役が、たまたま同じ世界観のシナリオに合致しただけ、ということもある。」
清十郎
「寺井さんは、その世界で清十郎の事をどれくらい知っているのですか? 清十郎は宇宙人との戦いのとき、寺井さんに出会いました。」
寺井
「俺もそうだな、宇宙人との戦いの少し前に政府に殺されて魂を宇宙人の再生装置で人間に戻してもらって、その時に清十郎に出会った。だけどその前に清一と記憶を共有する技、以心伝心(※ヤクザ小説のシーズン2にて登場したチート技。ゴーストに魔法のマント乗せてテレパシーのトレーニングをさせるとプレイヤー同士で記憶の共有ができる様になる)で清一の人生を知り、親としての清十郎を既に知ってた。」
清十郎
「既に? 清十郎を、知っていた……? なら清十郎の自宅の住所等は分かりますか?」
寺井
「ゲームの世界だったけど、清一の家までは行ったよ? 確か住所は……」
寺井の言った住所は清十郎の自宅の住所だった。つまり清一も同じシナリオの中にいて、政府と戦ったりカーチェイスしたり、清十郎と一緒に海へ酸素ボンベを背負って飛び込んだ。つまり清一にも、その記憶があるはず。
最近は清一とのマシな思い出が無かったら、共有できる記憶があってうれしい。と思う反面、共有してる事実を清一が気付いてないのが、寂しくもある。マシンガンで政府と戦うとかスリリングな体験だったし、あの思い出を酒の肴にして、清一と語り合ったら、楽しいに違いないだろう。
清十郎は切なくなってきた
清十郎
「寺井さん、もしかして、わたし達は永遠にこの世界に閉じ込められたのでしょうか……、あの時のシナリオではVRの世界は実はゲームではなくて、魂を異世界に飛ばして、その世界をゲームの電脳世界であるかの様にプレイヤーを騙していました。このゲームも実はゲームではなくて、異世界だったら……」
要するに清十郎は魂が肉体から切り離されたからログアウトできないと思っている。この世界で死ねば魂が壊れて、現実世界の自分の、体には戻れない。もしかしたら、もう肉体自体は死んでいて、魂だけの存在として、異世界に存在しているのかもしれない。
寺井
「ここが異世界かゲームの世界か、考えても真実は分からないが、もし異世界だとしても俺たちは、これまで現実世界と繋がれていたんだから、これから先の未来で繋がる可能性だってある。どっちにせよ、この世界で生きていけるなら、現実世界と繋がるチャンスがあり続ける事になる。もし今の体か魂だとしても、衣食の必要も排泄の必要もない、とても便利な体ですよ?」
寺井は清十郎を前向きにしようとしている。寺井は以心伝心(ヤクザ小説を参照)で清一の記憶にある清十郎の歴史を知ってる。清十郎は寺井をあまり知らないが、寺井は清一が知る清十郎を全て知っている。寺井にとっては清十郎を知り過ぎていて、もはや他人には思えない
寺井
作品名:ヤクザ、VRゲームにハマる! 作家名:西中