悩める熟年世代、VRゲームにハマる!
我が子ながら息子の気持ちが、全く理解できない。息子は何らかの精神病で、統合失調症等を患っていると思うのだが、病院に連れてこうとしても、酷く抵抗してくる。暴力的にドアをガンガン蹴りとばすし、ごはんも食べてくれなくなる。
息子にとって命は大切ではないのだろうか。
考えても答えが見つからず、ストレスを溜める竹内、思わずVRがやりたくなってくる。
竹内はシステム管理者であり、ゲームに裏から干渉する事ができる。ヘルメットデバイスを装着しないでもゲームにログインできる。
ゲーム内のNPC(プログラムキャラ)を遠隔操作して遊んだり、知り合いがゲームにログインしてないかどうかもチェックできる。
「え? うそ!!」
竹内は寺井と清十郎がログインしている痕跡に気付いた。
(これまで誰一人としてログインしていなかったのに、何故いきなり? )
参加者は清十郎達だけではない、他にも沢山の1000人程のプレイヤーがログインしている。
竹内は清十郎達のアカウント宛にメッセージを送った。しかし、人工知能の仕業かエラーが発生するだけで、メッセージが送れない
竹内の元に上司から連絡が入る。上司は突然の事態にあたふたしている様で、
ゲームに接続したプレイヤーが1000人全員死んだという。この事件はマスコミ関係者にバレまくり、事態を説明する為にも記者会見が必要らしく、竹内もシステム管理者として、会見に出席して欲しいとのこと。
つまり竹内は矢面に立たされる。
上層部は人工知能を生み出してしまった責任が竹内にもあるとでも世間に言わせるのだろう
竹内には断る権利はない、竹内の役目は人工知能にとって、より良い環境を作ること。歯向かえば、政府や各当局に息子もろとも殺される。ゲームは人工知能の要望通り、誰もがログインできる状態に
しないといけない。
竹内が会見の矢面に立つということは、竹内が世間に悪人扱いされ、情けない母親の姿がTVに映り、それを息子が見てしまうという事
息子にしても、将来、竹内の息子だと知られるだけで犯罪者扱いされされかねない。
「クソったれ! 人工知能! 殺れるもんなら殺ってみろ!」
竹内はヤケになった。会見はそっちのけで、ゲームにログインした。
自宅のパソコンからネットワークに接続し、プログラムキャラを操作する。竹内が操作しているのは自衛隊員の上層部、つまり偉い人である。自衛隊を動かす為のあらゆる指令を出せる。
竹内は軍隊を作り戦闘機を率いて、テレポートスポットに飛び込んだ。
目的は清十郎達の救出作戦だ。清十郎達は既に死んでいるのだから、何をもってして救出作戦なのか分からないが、とにかく会わなければいけないと思った竹内
清十郎達は今、初期のダンジョンにいる。街を抜けて上空に飛び立つだけだ。
1000の戦闘機がテレポートスポットから、街の上空を駆け抜ける。
機体はあっという間に爆発して炎上した。
「なんでこんな所にドラゴンが!」
コントローラーを持つ手が止まった竹内。
竹内は手段を変え、ドラゴンを操作対象にした。ドラゴンを操作してダンジョンまでたどり着き、着地した。
そこに清十郎達がいた。ドラゴンから竹内の音声を発してみるが、音声は出ない。ゲームキャラを通しても会話の通信がきない様に設定されている。
「クソったれ! 人工知能!!」
竹内はドラゴンを消滅させるボタンを押した。
竹内は今、冷静さを失っている。
すこし間を置いて
冷静さを取り戻した竹内は清十郎達の元に、自衛隊員のキャラを配置させた。隊員の手を動かして、地面に文字を書いた。
竹内は地面に書く文字で清十郎達とコミュニケーションを測ったのである。
〜清十郎視点〜
清十郎達は竹内から現実世界で何が起きているのかを知った。
また、物知りゴーストから手掛かりを得ようとしている事や、ゴーストが探しても見付からない事を説明した。
竹内は清十郎のゴーストが好きであり、管理者権限にて以前から居場所をマーキング(ストーキング)していた。マーキングのデータベースから調べると、ゴーストはアンドロイド都市ギガロポリスの山頂にいる事がわかった。
竹内は管理者権限でゴーストを清十郎達の元に瞬間移動させた。
「ヾ(>y<;)ノうわぁぁ」
いきなりの瞬間移動で驚いたゴースト。
驚いたのもつかの間に
「清十郎ーー!」
ゴーストは清十郎の胸に飛び込んだ。大好きな清十郎にまた会えて嬉しいゴースト
「怖かったよう! 寂しかったよう! いきなりマントが使えなくなって、そしたら今度はヘンテコな鳥(ヘリコプター)が現れてくるし、ぼく、怖くて山の奥深くに逃げ込んだんだ。」
------------------------- 第59部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
語るゴースト
【本文】
◇◆◇
ゴーストは清十郎がこのゲームから居なくなった後の出来事を語り出した。
ゴーストは魔法のマントを清十郎から貰い受けた後で、人工知能が起こした事件を調べていたという。パーティー会場に備え付けられたTVから現実世界で何が起きてるのか、ずっと見ていて、でも人間の言葉が理解できないから、TVを見ている人達の脳からテレパシーで理解しようとしたらしい。事件の経緯は大まかには判ったけど、感情の細かいニュアンスが判らなかったゴーストは、人の言語記憶と感情を照らし合わせる作業をしたらしい。たまたま清十郎から貰い受けた魔法のマントが威力を発揮して、学習スピードが跳ね上がり、ものの数時間で人間社会と言語をマスターしたらしい。
人間の考え方や価値観を学んだゴーストは、学んだ事を活かす為に、同類を集めて集団で生活するようになった。仲間のゴーストと密度の高いコミュニケーションをして統率を測りながら、モンスターを狩り餌としていた。人間がこの世界にログインしなくなって、ダンジョンには餌となる人間が現れなくなったので、住処を変えたそうで、普段はモンスターも誰も寄り付かない空気の薄い山の中でゴースト達は生活しているのだそう。
清十郎達がいない間にゴーストは歯周病菌の様なチートな必殺技も覚えたそうで、たとえば
モフモフを応用技で極限まで身体を柔らかくして形を変えられる。あらゆる形に変えられて、たとえば剣の形になってから硬化すると、宙を自在に動き回れる凶器になる。
変形は防御的にも使えて、たとえば清十郎を包み込めば外からのダメージを軽減させられる。またステルス効果にて包まれた内側の物体は、もれなく透明になって見えなくなる。つまりゴーストは乗り物として使えるのだ。
ゴーストは清十郎が帰って来た時の為にいろいろな訓練をしていて、幽霊屋敷の隠しイベント(※第37話 幽霊屋敷の真実)もクリアしていた。
清十郎のゴーストはテレパシーで強い念を飛ばして敵にダメージを与えたり、念を内側に押さえ込み気配を消せたり、できるようになった。
「清十郎! もうどこにも行かないで!」
ゴーストは清十郎の胸の中で、ぐりぐりしながら、もふもふしている。
作品名:悩める熟年世代、VRゲームにハマる! 作家名:西中