悩める熟年世代、VRゲームにハマる!
「もしゴーストが記憶を弄られて忘れているだけなら、過去のシナリオを思い出すかもしれません。もし思い出して物知りゴーストになれば、何らかのアイデアくらい、くれるかもしれない」
清十郎も寺井もヤケになっていた。
藁をもすがる思いで、ゴースト探しの旅に出ることになった。
「寺井さん、テレポートスボットから最初のダンジョンに飛べませんかね? 清十郎のゴーストが住処に帰ってるとしたら、最初のダンジョンにいる筈」
テレポートスポットは使える様である。しかし初期のダンジョンに行ってもテレポートスポットがない。ゴーストがもし居なかった場合、身動きができなくなる。
今の二人は人工知能の嫌がらせで、魔法もアイテムも使えなくなっているから、もしゴーストが居なかったら、そこで詰んでしまう
清十郎
「少し寄りたいところがあります」
寺井
「?」
清十郎
「今いるVîP世界は日本の町並みが再現されてます、もしかしたら、戦闘機やヘリコプターが有るかもなので、それを持って行けるか試してみます」
寺井
「そういうことなら、そっちを優先しよう。ダンジョンにはテレポートスポットがないから、一度行くと帰れなくなるかもしれない。今、このゲームで死ぬと何が起こるかわからない。本当に死んで永遠ログアウトできないかもしれない、充分気を付けないといけない。痛み止めも使えないし、モンスターと戦うのは大変になる」
清十郎達はテレポートスポットを使い軍事施設にて合流した。
軍事施設の門には自衛隊なNPC(プログラムキャラ)が一般人の通行を制限していて、無理やり入ろうとすると邪魔をしてくる。職業が軍人でないと入れてもらえないらしい。
入口で問答していたら、施設からヘリコプターが飛び立つのが見えて手を振ってみた。
ヘリコプターは清十郎達の元へ降りてきて……
「良かった! 他に誰もこの世界に居ないのかと思ってた。心細かったよ!」
ヘリコプターを操縦していたのは藤井プロだった。藤井プロは実在のヘリコプターの運転免許を持っているそうで、何とか乗りこなしているそう。職業が軍人でないと、戦闘機の操縦はできそうにないという。戦車なら運転マニュアルが施設の中にあるらしく読めば操縦できるかも、らしい。
藤井
「しかし君たちも物好きだね(笑) こんな危険な世界に飛び込んで来るなんてさ!」
清十郎
「貴方こそ、何しにこの危険な世界にきたのです?」
藤井
「そんなもの好奇心に決まっているだろ。危ないとわかってる場所に飛び込むのが男の子というものだよ。そんな事より、乗りなよ。何処か遊覧飛行しようよ。」
清十郎
「ところで藤井さん、どうやって施設に入ったのです?」
藤井
「うん? レイピアで門番を突ついた、だけだよ?」
清十郎達も早速門番を切り倒した。
藤井
「ちょっと! 早まっちゃだめだろ!」
清十郎達が門番二人をやっつけたら、サイレンが鳴り始め、施設の中が急に慌しくなった。
藤井
「いいから、早くヘリに乗って、このままだと追っ手が来て殺されちゃうよ!」
〜ヘリの中で〜
藤井「レイピアで突くのはギャグだよ。このゲームはクオリティが高いから、公務員なんか攻撃したら、指名手配されるよ」
笑えないジョークにキレる清十郎
「藤井さん!、どうやって施設に入り込んだのですか!」
藤井
「賄賂を渡して入るに決まってるじゃないか!」
その理屈は犯罪者の視点だった。まっとうに生きている清十郎には思いも寄らない価値観である。
藤井はヘリに乗ったままテレポートスポットから、初期の街にテレポートした。
藤井「とりあえず、使えそうな武器と弾薬を持っていくといい」
ヘリコプターの後ろの席は藤井が賄賂と引換に貰い受けた弾薬と武器が所狭しと積まれていた。
藤井「これからどうするんだい? 僕はログアウトできない理由を探す旅をしようと思うのだが」
清十郎が「じゃあ、初期のダンジョンに連れてって欲しい」と言おうとした瞬間、ヘリに衝撃が走った。どうやらヘリの音を聞きつけて飛行系のモンスターが現れた。
3人とも焦る。テレポートスポットから一旦VIP世界に逃げる藤井。
藤井「 アレを弾薬で倒せというのかい?」
ゲーム内の魔法システムが解除されているせいか、街の防壁になっているバリアが機能していない。モンスターが自由に街を徘徊している。
清十郎「ヘリコプターよりデカいのが3匹でるとか、絶対無理です」
藤井「戦車か、もしくは戦闘機が必要になるね」
清十郎達は戦車を取りにVìP世界に行ったが、まだ自衛隊は警戒していて、近づくのは危険だった。どうすればいいのか
藤井「アンドロイド都市に行ってみよう、あの国の魔法兵器ならモンスターも御手軽にやっつけられる筈」
しかし、アンドロイド都市は跡形も無くなっていた。テレポートスポットだけが宙に浮いていて街は魔法の動力源を失い地面に落下してバラバラになっていた。
バラバラの残骸はとても軽く、まるで発泡スチロールのようだった。残骸の中からNPCの死体が沢山でてくる。辛うじて助かった者もいるようで……
藤井「この世界も、地球と同じく悲惨ななんだね……」
人工知能の想定外か、それとも、そのつもりだったのか、アンドロイドの惑星ギガロポリスは魔法が動力源だった為に、完全崩壊した。
崩壊に巻き込まれた人々は、これからどうなるのだろう。彼らは衣食住しないと、死ぬ様にプログラムされている。擬似人工知能と言われ、高度に人間に似せているから、不憫に見える。
唯一の救いは災害が起きても人間の様に治安を悪化させたりしない。彼らNPCは悪意を持たない。、つつまく死ぬのか、それとも何もない世界から、希望を見出すのか
広大な大地を見渡した清十郎たち。自然豊かであり、動植物もいる。もしかしたら、、それに順応していくのかもしれない
藤井「さっき、気付いたのだが、バリアが崩壊してるみたいなんだよな」
バリアがあるから、魔法のマントで攻撃しても破壊できない。
藤井「光の速度を超え動けるモンスターが居たよね……」
ドラゴンのことだろう。魔法のマントを装備しないと倒せないモンスターである。
藤井「もしドラゴンが生息してる惑星のバリアが外れてて、宇宙に解き放たれたとしたら…」
もしドラゴンに襲われたら惑星ごと、破壊されかねない。あるいは銀河丸ごと破壊されかねない。
清十郎たちが、気付きもしない内にゲームオーバーになるかもしれない。
藤井「そういえば普通、ゲームオーバーはログアウトする仕組みだったな。
寺井は嫌な予感がして、反射神経の力で時を止めていた。。
藤井が清十郎をレイピアで突き刺そうとしている動きを見た。
咄嗟にレイピアを剣で弾いた寺井
「どういうつもりだ藤井!」
藤井「とうやら反射神経については、時間止めも、未来予知力もちゃんと機能するようだな。イキナリ惑星が消滅して、知らない内にゲームオーバーになる自体は避けられそうだ。」
そう言って藤井はヘリコプターに乗り込みテレポートスポットの中で待機した。
作品名:悩める熟年世代、VRゲームにハマる! 作家名:西中