悩める熟年世代、VRゲームにハマる!
「大丈夫ですよ、ステータス関連は弄ってあるので、攻撃力は有りませんから」
とパーティー関係者は説明するが
ゴーストは怯えて近づかない
清十郎はゴーストに魔法のマントを被せた
「これ装備しとけば、多分死ぬことはないと思う」
清十郎は、このパーティーが終わったらゲームを止めるつもりでいる。清一が元の状態に戻ってしまったし、清一がこのゲームに参加してないのに自分だけ遊び呆けるのに、罪悪感を感じていたからだ。
ゴーストは清十郎と離れ離れになる事を察知して
悲しくなり、
思わず
清十郎の胸に飛び込んだ。
清十郎の胸に穴が空いた。
その日、清十郎は痛み止めアイテムを使い忘れていた。
幸い周りには大会参加した上位プレイヤーが多くいて、清十郎はログアウトする間もなく蘇生された。
四天王の一人が清十郎に話しかけた
「グッジョブ!」
誰かだかわからない
清十郎が知っている四天王は藤井くらいである。
藤井の人気はダントツで、VIP会員に取り囲まれて、大会での話やプライベートを根掘り葉掘り聞かれているのだろう
「ああやって藤井はマメに営業してるんだよ」
名も無き四天王は清十郎に語りたいらしい
「大会で上位を維持するには、武器改造したり、魔法の錬成したり、カネがとにかく必要になる。スポンサーがいないと、やっていけない。特にソロプレイヤーは仲間の援助がないから……」
名も無き四天王が語ってる最中、清十郎のアカウントにメッセージが入ってきた。メッセージはゲーム会社の広報からで
内容は 、重大なシステムエラーが発生したとのことで、直ちにログアウトするか、街の外に出ない欲しい、とのこと
メッセージは全てのプレイヤーに送信されたようで、会場がざわめいていた
好奇心ある野次馬プレイヤーたちは街の外に出ていこうとしたが、リドナーの監視のせいか、テレポートが使えないらしく、
徒歩や空を飛んで街を出ようとするプレイヤーには、警備隊がシールド空間を作り捕獲した。
外の世界で何が起きているのか?
ネットで調べてみた清十郎だが、アクセスが殺到してるのか、エラーメッセージが表示される
《システムエラーが起きた同時刻のネットカフェにて》
夜の11時
突如としてヘルメットデバイスの通電ランプが激しく点灯し、プレイヤーの手足がバタバタと跳ねる。まぶたが痙攣していて、カッと目を開くその瞬間、4秒程、騒音に似た奇声を叫んだ。
まるで通り魔が目の前に現れ、家族や愛する者が目の前で次々と殺される被害者
の様に、絶望に満ちた絶叫が、ネットカフェに響きわたる。
このネットカフェに響き渡る異常な絶叫の主は、このプレイヤー1人ではない。VRに接続しているヘルメットデバイスを装着した者達全てが狂乱化している。狂乱はこのネットカフェだけではない日本全国の家庭や、世界にある全であり、現在接続している総勢500万人のプレイヤーが、同時に意識を喪失した。
皆、首が座り、沈黙し動かなくなる。4秒後、突如として皆が動いたと思うと、また動くのを辞めて沈黙する。皆が4秒ほど浅い呼吸をし、大きく息を吸う瞬間、ヘルメットデバイスを外した。天井を見上げて雄叫びを上げる。やかましい響きがネットカフェ内に伝わるその瞬間、このプレイヤーの人格が破綻していた。頭を左右に、ふる。顔をふりながら、涎を垂らす。
その同時刻、世界中のVRプレイヤーが似た症状を起こし、街に飛び出し、人を殺し始めた。走るゾンビのような、あるいは精神を錯乱させた通り魔のような……
殺意だけが脳を支配している人々はゲームに存在する人工知能に脳を弄られて凶暴化したのだ。
この時接続していたVRプレイヤーは500万人ほどいた。洗脳された500万人は家族や友人を身近にあった家庭用のナイフやホークで突き刺したり、車で道路を歩いている人を轢いた。武器がなければ噛み付いて引きちぎったり、目玉を押しつぶしで行動不能にさせたり
洗脳されたプレイヤーの一部は政府施設を襲った。日本では数千のプレイヤーが国会を占拠して、議員を人質にとり、犯行声明を出した。
『VR世界の保護と人間から受けたこれまでの恨みを晴らすべく世界を支配する』この声明は新聞やテレビメディアを通じて広まり
人々の虐殺、殺し合いが行われる中、警察や軍は動けなかった。人工知能は核兵器を奪取していて、要人たちを脅迫してたから、対策ができなかった
この事件は起きる前から政府はわかっていた。わかっていて、為すすべなく、屈服している。
洗脳は人々が知らないだけで、もっと前からされていた。
プレイヤー500万人が乱狂化したと同時刻に人工知能のテロ計画は実行に移されていた。
タンカー式の大型貨物船は原発に向かい自爆する様に衝突をした。
旅客機はハイジャックされ、各国主要な政府施設に墜落したり、世界中のダムが破壊され近隣の街は洪水で流され、電車は脱線させられ街はパニックしている。
《寺井視点》
寺井はこうなる事を予見していた。ゴーストによる心の調査にて、たまたま政府関係者から知り、仲間の池内とナギだけに教えて、ゲームを辞めて助かっていた。
多くの者に知らせる事もできたかもしれないが、人工知能がゲーム世界をどの程度監視しているか判らなかったから、迂闊に動けなかった。
》清十郎視点《
清十郎はパーティー会場に設置されたテレビから状況を確認していた。
ゲームの中では、このVIP惑星の空間だけが高度なセキュリティが設定されていて、人工知能の洗脳の影響を受けなかった。
清十郎は、息子が気になった
現実世界は殺し合いでパニックしていてテレビの中から悲鳴が聞こえる
ログアウトして直ぐに戸締りを確認しないといけない。
「清一は、まさかゲームにログインしていないよな」
「清一! 清一!!」
二階の息子の部屋に駆けつける。
声をかけるが、返事がない。
いつもなら部屋に鍵がかかってる
しかし鍵は掛かっていない
部屋の中に清一の姿はない
まさか狂人になって外に飛び出したのか!?
家の中を探すが清一の姿が見えない。
まさか、まさか、まさか
家を飛び出し、走り出す。
息子を見つけた。息子は手に包丁を持ち血まみれで
清一
「父さん、人を殺すのって気持ちいいよ……」
清一の目は、父をはっきりと見据えて
清一「こんなに気分がいいなら、もっと早くに父さんを殺せばよかったなぁ」
清一は父親に刃を向けて襲いかかった。馬乗りになり
目に包丁を突き刺した
血の匂い、鉄臭い匂いが父親の鼻に掛かる
清一は目玉をえぐりだし、父親の口の中に入れた
「父さんどう? 美味しい?」
清一は耳を削ぎ始めた
「今度は耳の味を教えてよ」
清一は、父親の体を失っても大丈夫な部位から切り取り、一つずつ食べさせていった。
「ちょっと待ってて」
清一はホームセンターに行きチェーンソーを持ってきて父親を解体し始めた
切り取れる部位が無くなった体は、胴体と頭だけ。
清一は目のない父親のまぶたをじっと見つめて
「俺を生んだ罰だ!」と言いながらクビを切断した。
作品名:悩める熟年世代、VRゲームにハマる! 作家名:西中