悩める熟年世代、VRゲームにハマる!
「母は働いていても、家族の為にゴハンの支度をしていた。健康に気を使った献立で家族を愛していたのが良く分かる。それなのに健康に気を使わない食事ばかり食べる貴方は、母のこれまでの努力を冒涜している。病気なって早く死ねば清一の面倒なんて観る必要なんてないよね? さっさと死んで責任を放棄したいのだろう。清一から開放されて楽に成りたいのだね? 妻を泣くほど愛してないのだから、清一の存在もその程度なんだ。そうでなければ、清一を働かそうとは、させない筈だ」
「物に当たる行為が悪い事だとは思っているよ? なのに、どうしていつも、悪い事をしているかの様に清一を諭そうとするの? 好きで物を破壊している訳ではないのに。清一を悪者扱いするなんて、愛が無い! やっぱり、父は母を犯したかっただけなんだ! だから、母が死んでも悲しくないのだ。最初から愛してなんかいなかった!」
「清一を働かせようとするのは、清一が人生のお荷物だからでしょ? 清一を働かせて、老後の面倒を観て欲しいのだよね? だから母さんを孕ませて、出産の苦しみを与えても、平気だったんだよね? アルバム観ても、妊娠中の母さんの写真、一つも無いよね。愛してたなら、家族写真を撮ってあるはずだよね? やっぱり父にとっての妻は、童貞を卒業する為の道具で、世間体を気にして独り身でいたくないから、結婚したのだよね? だからこそ、そうしてテレビを観て笑っていられる。母さんが死んでから清一は一度もテレビを観て笑ったこと無いのに!」
「殺したい! 殺したい! 殺したい!殺したい!」
「こんなに清一が壊れるなら、産まなきゃ良かったんだよ。清一だって、貴方を恨んでイライラするのはシンドい。ため息を吐き出したい気持ちを毎日我慢しているのに、父親役の貴方は、どうして仕事に行く度、二階まで届くような声でため息を吐くの? 清一に働かない事の罪悪感を植え付けたいのだよね? そうでなきゃ、ため息なんてしないよね? 清一は毎日、死たいほど苦しんでるのに、ため息はしないよ? 貴方はやはり忍耐がない。だから性に溺れて母さんを捌け口にして、出来ちゃった結婚をしたのだろう。将来設計なんて、どうにかなるさ、と考えていたに違いない。そんな軽い気持ちで、清一の人生を壊した。清一の命を軽んじてるから、だから、お小遣いを くれないのだよね? 清一は貴方の ペットで、だから、トイレに行きたい清一の気持ちが分からない。顔を見れば殺したくなるから、清一は貴方がいるとき、トイレに行けないのだよ? トイレに行きたいとき行けない生活なんて、鎖に繋がれた犬だよね? トイレに行くのに階段を降りてこない清一を貴方は疑問に思わないの? 貴方が10回トイレに行くとして清一は1回くらいしか行ってないよね? シ便で済ましてるのに気付かないの? どうして貴方は、そんなに鈍感なのですか? 清一が貴方を殺さない為にどれほどの苦労を強いられているのか、貴方は全く理解できてないよね? もし、理解できたら、家には帰ることは出来ないはずだからね。家に貴方がいる度、清一は母が居なくなった事実を噛み締めて、悲壮感味わうの、分かってる? 母さんを孕まして殺しておいて、謝罪もしない貴方、清一の前で土下座するの、いつになったらしてくれる? 命はいつか死ぬんだよ? 死ぬとき痛いかもしれないのだよ? それ分かってて清一を生んだとしたら悪魔だし、知らないで生んだとしても、土下座して謝罪する義務くらいあるでしょ? 清一は子供なんて絶対作らないよ? 命を作るなんて悪魔の所業だよね。貴方は悪魔。世の中の多くが悪魔だ。母さんには罪はないよ? セックスは女か受身だから」
父親に暴力をしないのは
清一自身、それらの感情が極端な被害妄想であるのを自覚していたからで、また父を愛していたからで
清一に潜む悪心は愛とは相反する感情であり、清一の脳は異なる感覚に支配され感情を処理しきれなくなった。それはある意味、脳が不要な異物で侵食されているとも解釈でき、そのせいで正常な思考がでなくて、被害妄想癖になっている
清一はパニック障害になっていた。
脳が相対する感情に侵食された清一の脳は、処理しきれないピークに来たときパニックした。呻きや叫び声を発する。近所に騒音が届くような絶叫して、恥ずかしい思いをして、パニック症状の意識を逸らして、平穏を取り戻そうとする。
パニック症状は主に父が外出した瞬間に始まる。抑えていた殺意を声に出しても父は気付かれることはない。
清一は殺意の衝動を開放して家の中を走り回る。それはある意味で、運動でありカロリーを消費する事で考える力を失って冷静さを取り戻せる。ある種の肉体の防衛本能かもしれないが、家の中でカロリーは使いきれないから、清一は絶叫してカロリー消費し、そして我に返ろうとする。
清一の基本的な生活スタイルは憎悪とパニックの連鎖から、毎朝、獣になる事であり
清一はつい最近まで、人ではない獣の様に、家を徘徊していた。
清一が働かないのは、恨んでる父への復讐心のつもりであり
今は父親の努力が見えるから、半分くらいの不快感情は無くなった。パニック障害は無くなり、憎悪も半分くらい無くなった。
しかし清一は、ゲーム内で父親と出会ってしまった。遊んでいるのを知ってしまった。遊んだ埋め合わせに、少しばかりの罪滅ぼしをしていて、それで朝食が用意されている。そう思った清一は元の獣に戻った。
心は閉ざされ、ゲームの世界に逃避する。
父親の存在を感じたくない清一は現在のアカウント吉井清一を捨て、新しいアカウントに変えた。
清一は、もう二度と父親の存在を感じたくない。感じてしまうと、殺したくて愛したくてパニックで苦しんでしまうから。
犯罪者になり果てた姿を想像する清一、怒りが収まらない清一は壁を思いっきり殴って、
手に怪我をした。
傷口の血を見た清一は、そうなったのは父親のせい、と考えてしまい狂人となって
用意された朝食を投げつけようとする。
しかし、投げたら、父親に心の弱い人間だと思われかねない。食事を投げるのは赤ちゃんが認知症老人くらいであり、絵にならない。
男のプライドが朝食を投げたい感情を押さえ込んだ。
清一は、しぶしぶ朝食を食べた
うれしくは思わない
食べきらなければ、人としての神経を疑われる。
折角親が作ってくれたのに、食べないのでは
人として頭がおかしい
清一は、誰に責められてる訳でもない。
自分自身に責められている
意識が父から自身にスライドし、怒りの矛先が無くなり、冷静になる。
清一は冷静なうちに朝食を食べきり、ゲームにログインした。意識をゲームに向けている間だけは獣にならなくて済むから……
〜清十郎視点〜
パーティー中の清十郎
パーティー会場には、巨大なドラゴンが見世物として飾られていた。
手なずけられているのだろうか、大人しく、している。プレイヤーたちが触っても問題ない。
ゴーストがそろりそろりと近づくが、距離を置いている
ゴーストにとっては、ドラゴンの尻尾が、かするだけで、死んでしまうかもしれない。とても警戒している
作品名:悩める熟年世代、VRゲームにハマる! 作家名:西中