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悩める熟年世代、VRゲームにハマる!

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針の山に命中させるのは、やろうとしたら、結構難しい。針山に刺さって死んだのは清十郎の方だった。

「クソったれ!」
もうこんなゲーム終りや!

落ちる最中、清十郎はログアウトボタンを押した。

「そうや!」
地面に激突する直前にログアウトすればいいんや! そうすれば何度でも安全に挑戦できる!

しかし、そう思うのも
つかの間
清十郎はログアウトが出来ない事に気づいた


なんでやー!


なんでなんやー!

叫ぶ清十郎、
周りをみると同じような境遇に陥ってる参加者がいるようで、皆、「なんでなんやー!」と叫んでる

なんでなんやー!のやまびこが山々に反響する。そして死ぬ。リターンして落ちて死ぬ。死ぬ度に「なんでやー!」がこだまする

なんでなんやー!が、やまびこにもならないくらい、皆疲れ果てた頃
怒りが頂点に達した参加者は多かったと思う。





〜ゲームの管理人室にて〜

「だから、そのへんで辞めてください!」

ゲームの管理人には、同僚に説教されていた。

「構わん。ワシらが苦労して低賃金で働いてるのに、こつらは楽しそうにゲームで遊んでる。許さん!」

「だからってトランポリン外してログアウトまで許さないとか、やりすぎですよ、会社をクビになってもいいんですか! 引きこもりの息子さん養わなくちゃいけないんでしょう?」

「だからこそ、ストレス貯まるんだよ! オレだけ働いて、なんで息子は家でテレビやゲームばかりしとんだよ。俺は傷ついてるから、な。その分、皆も同じ気持ちになればいいんだ! クビなんて上等!」

「ダメです! 僕までクビになりますから!」

管理者たちの攻めぎあいの頃、死体の山々がクッションになり、助かるかも参加者も現れた。清十郎は不運で、その恩恵は受けられなかった。しかし、後からサービス会社が慰謝料を、たんまり払ってくれたから、ある意味幸運だったかもしれない。ゲームの管理人威力業務妨害の容疑で逮捕された。


------------------------- 第30部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
再開

【本文】

清十郎は改めてゲームを再開した。結構高いゲームだし、途中で辞めるのはもったいないし、ゲームで息子に会う使命があるし

このゲームの落下の攻略ポイントは主に3つあって、一つは針山を使い、一つは血の池に着地し、一つは透明なトランポリンである

透明トランポリンは助かった人達が跳ねるから、注意深く地面を見ていると助かる確率が上がる。しかし、針山等で参加者と争っているとトランポリンに気付きにくなる。また血の池はグツグツ煮立ってるから、落ちると熱い。熱いけど助かる


清十郎は面倒なゲームに参加したことを少し後悔した。息子にとってはこれが面白いゲームなのだろうが、今の清十郎はさんざん痛い思いをしたから、ゲームの良さが納得できない。

さんざん愚痴っていたら、参加者が「ほんまほんま!」と、声を掛けてくれて、親しげに話しかけてくる。「そやそや!」と適当に相槌してたら、いつのまにか仲良くなってて、

「清十郎さん、折角だから、このゲームを堪能しましょうよ」
と説得される。裸の付き合い的にも、かなり皆、開放的になっている。なんでや地獄を経験した者同士だし、親近感が湧いたのだと思う


ゲーム中は可哀想な設定のキャラクターがいて、落ちて友達とか家族を失ってまった人が、すすり泣いていたり、お腹が空いてげっそり痩せたヒモジイキャラクターが、さ迷ったりしている。

設定は地獄世界、全人類が強制召喚され、上から落ちてきパニックしているという状況。

生存者の集団が群れを求めて1箇所に集まって、コロニーができている。印象としては、貧困国のスラム街を連想させる。

人々は鬼の噂をしていて、いつまた襲われるか恐怖におののいてる。あくまでゲームの設定であるが、人々は定期的に鬼に襲われる。

鬼に襲われたくなければ餌(子供)を
産み落として鬼に提供しないといけない。

ゲームキャラの人々は食べるものがなく共食いするしかない。共食いして子供を作らなければ、惨たらしく拷問される。過去は誰もが自殺をしたがる時代があったけど、この世界しか知らない新生児、新世代にとっては当り前でしかなくて、地獄世界に慣れてしまってる。躊躇なく子供を作り、鬼に生け贄を捧げている。
なので不満を吐いているのは旧世代と、旧世代の価値観で育てられた子供のみで、他は適者生存できてる。

プレイヤーは、旧世代とその子供の愚痴話を聞いたり話相手になると、ゲームキャラに優しくされたり、時にセックスを求められる。

プレイヤー次第で擬似的な承認欲求を満たせるゲームになっている。

プレイヤーの行動次第だから、鬼に闘いを挑むこともできる。
その場合、チームを作ったら勝てるそうだが、鬼が助けを呼んでしまうと、数で圧倒されて負けてしまう。
もし本気で鬼との戦いで勝ちたいのであれば、鬼を闇討ちするか、旧世代と新世代の者たちを説得して戦いの仲間に加えないと、いない。

プレイヤーが1万人集まり、団結して鬼と戦争ができる定期イベントがあるが、勝っても戦利品が貰えるだけで鬼自体がこの世界から絶滅するわけではない。ゲームをクリアするには、鬼の謎を解明し、鬼一族の長(おさ)に出会わないといけない。

鬼一族の長は鬼の謎を解明した人のみが会えるイベントなので、ソロプレイが可能になっている。しかし、謎は世界中の遺跡に隠されていて、探索すると世界中に散らばる鬼が邪魔をしてくるから、戦いが避けられない。
プレイヤー同士がチームを組んで戦うと攻略しやすくなる。このゲームのオーソドックスなプレイスタイルである。

清十郎はこのゲームで息子を探して観察するのが目的、きっと息子の清一はプレイヤーと一緒に遺跡探索をしているのだろう。清十郎も息子と同じくメンバーを募って、遺跡巡りをしようと思った。

メンバーを作るため、出合った人に声を掛ける清十郎、しかし、かなか意見が纏まらない。東に行きたいやつ、南に行きたいやつ、意見が噛み合わない。
折角なんでや事件で仲良くなったというに。
清十郎はこういうのが嫌でネトゲを敬遠してる。話し合う時間がもったい。

清十郎は南に進んだ、あとのことは知らない。死んでまた最初からできるし。
清十郎が南に100m進むと、後ろがやけに騒がしい。さっきまで東に進むか南に行くかで揉めていた2人だ。メンバーになりかけた清十郎を失いたく無かった二人は考えるのを辞めて清十郎ついて来た。また、その後ろを似たようなのがついて来た。

プレイヤーは皆、いつ鬼に襲われるかわからないからビビっていた。冒険に行きたいけど、先頭きって前を歩くのは怖かった。誰かの後ろ、背中を歩きたかった。

清十郎の後ろにつてきた2人の背中には、二人と似たようにビビったプレイヤーがついて来ている。その後ろにも似たようなビビリなプレイヤーがついてきて来ていて

清十郎が500m進んだ頃には1000人くらい後ろについてきて来ていて大名行列化していて

遠くから見ると、とても目立つ状況