小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

北へふたり旅 66話~70話

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


  北へふたり旅(67) 函館夜景②

 (何時だ?・・・)1時間ほどで目がさめた。
部屋へ着くなり荷物を投げ出した。
カーテンも開けずベッドへ倒れ込み、そのまま眠りへ落ちた。

 (よく寝た。なんだか暗いな・・・)

 カーテンを閉めたままの部屋はうす暗い。
ベッドから起き上がり、窓際まで歩き、おもいきりカーテンを開けた。
(おっ!・・・)思わず声が出た。

 「なに?。どうしたの?。何か有った?」

 眠そうな声が背後からきこえた。

 「すごい光景だ。自分で見てごらん」

 妻がわたしの横へやってきた。「あっ・・・」

 一枚ガラスの向こう。これぞ港町函館といえる景色がひろがっている。
窓枠いっぱいに函館山。
あしもとへ目を転じると、赤レンガの倉庫が連なっている。
海沿いの道路の先。遊覧船の発着場が見える。
左に、おおきな坂がある。(あれが二十間坂かな・・・)
函館で見たい景色が、すべてひとつの窓におさまっている。

 「あ・・・ロープウェイ!」

 ひだりに見える白い建物から、山頂へ行くゴンドラが出てきた。
おおきい。おそらく100人以上乗れるだろう。
山頂からゴンドラが降りてくる。
2台が空中ですれ違う。
およそ3分。ゴンドラの動きに、思わず2人で見とれてしまう。

 「散歩に行こうか」

 足元の赤レンガ倉庫を指さす。

 「いいわね。でもちょっと待って。
 群馬のおばちゃんから、観光に来たシニアレディに着替えます」

 妻は眠るとき、かならずパジャマに着替える。
わたしのようにバタンと、ベッドへ倒れこむことは絶対しない。
面倒だろうと言えば「少しの時間でも、快眠のために着替えるの」
と笑う。

 ロビーへ降りて驚いた。いつの間にか人があふれている。
チェックインの順番待ちが長蛇の列をつくっている。
どこからこれほど集まってきたのだろう。
わたしたちが着いたとき、ひろいロビーはガラガラだった。

 「ここは人種のるつぼですねぇ。
 世界中から、いろいろなお客様がお見えです」

 たしかに異国の人があふれている。
白人がいる。黒人もいる。アラブ系の人もいる。
東南アジアから来た人も混じっている。
あらゆる国から来た人が、此処に集まっている。
 
 妻は人ごみの中。人間を観察するのが大好きだ。
時間をわすれ没頭できるという。

「人を観察すると、なにが面白いの?」
「暇つぶしになります」「君は暇なとき、人間を観察するのか?」
「忙しくてもしています」「どっちにしてもするのか。よくわからないな・・・」

 「人が好きなの。
 興味があるから観察するの。知りたくなるの。
 人ごみを外から観客のように、言動や雰囲気を観察するの。
 ゆっくり見ていくと、さまざまな人物が見えてきます」
 
 「たとえば?」

 「普通ではない人が、この中に混じってます」
 

(68)へつづく