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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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彼女は、綺麗にお化粧をして、長い髪を頭に沿わせて編み込んでいたのだ。



睫毛を伸ばして、鮮やかな口紅を塗って、ティアラのような髪の束を頭に乗せた園山さんは、綺麗だった。それにびっくりしてしまったので、僕はなかなか次の言葉が言えなかった。



「…お化粧して、髪を結っていたんですね」

そう言うと園山さんははにかんで、「みっともないと、あなたに恥をかかせてしまいますし…」と俯いた。そんなこと、思う必要ないのに。

「いえいえとんでもない!普段のままでも充分ですよ!でも、すごくお綺麗です」

「ありがとうございます」



まるで籠に束ねられた花がこぼれているようだ、と僕は思った。でもそれは、言えなかった。







「あのー…ほんとにここでいいんですか…?」

僕達は大学を出て地下鉄に乗り、遊ぶにはもってこいの、都心の大きな駅で降りた。大学からはそう遠くない。そして今、僕達は駅前の大きな通りにある、一軒の店の中で、列に並んでいる。

「はい!ここがいいんです!」

僕がそう答えても、園山さんは店内を見渡す仕草をして、不思議そうな顔をしていた。ここはファストフードの大手の店だ。



僕はもう、自分の家のことは園山さんに話した。父の職業も、生まれ育ちの話も園山さんにした。園山さんからは聞けなかったけど。



だから、園山さんが不思議に思うことは無理もないと思う。

「僕…こういうとこ、来たかったんです」

「初めてなんですか?」

園山さんは、驚いてはいたけど察してもいたのか、あまり動じていなかった。

「はい…ずっと来たくて…友達と遊びに行くって、ほとんどしたことなかったから…」

その僕の言葉を聞いて、園山さんは一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、すぐに微笑ましそうに僕を見つめる。

「何、食べましょうか」

そう言って彼女は嬉しそうに笑っていた。

その時、受付レジの店員が「次の方どうぞー」と、はきはきとした声で僕達を呼んだ。