馨の結婚(第一部)(1~18)
僕はチーズバーガーを頼み、園山さんはチキンカツバーガーを頼んだ。そして、なんとサイドメニューのオニオンリングアンドポテトフライを、Lサイズにしてもらっていた。
「いただきまーす!」
園山さんはチキンカツバーガーの包みを開け、トレーに敷かれた紙の上にフライを開けて、ぱくぱくと食べ始める。
「いただきます」
僕も、チーズバーガーの包みを開けて、お茶の入った紙カップの蓋にストローを刺した。
生まれて初めての、チーズバーガー。両手で食べ物を抱えてかぶりついたのなんて、どのくらい前だろう。ああ、こんなに美味しかったのか。
友達と食べてるからかな、家での食事とは違って胸がわくわくしてきて、いくらでも食べられそうな気がしてくる。
でも、僕は食が細い方だ。というか、そうらしい。自分では、「もう満足したから充分な量だ」、としか思わないけど。
そして、どうやら園山さんはたくさん食べても平気なようだ。
彼女はさっきから片手にチキンカツバーガーを持って、それを一口かじって飲みこんでから、オニオンリングをつまんで、またバーガー、そしてポテトと、元気よく食べている。
僕がチーズバーガーを食べ終わってからも、園山さんは残ったフライドポテトを食べていた。
顔中を笑顔にして、美味しそうにポテトを二本同時に口に放り込む園山さんは、まるで子供が食事をしているようで、かわいかった。
「美味しそうに食べますね」
思わずそう言ってしまうと、園山さんは急に焦ってポテトを飲み込んだ。
「あ、すみません、はしたないところを…」
「いえいえ、かわいらしい、という意味ですから」
「えっ…」
僕の言ったことに、園山さんは本当に驚いて、顔を真っ赤にしていた。そして、ちょっと俯いて顔を逸らす。
何か僕はおかしなことを言っただろうか。かわいらしい食べ方だと思ったから、そう言っただけなんだけどな。そう思って僕は氷の入ったお茶をストローでかき混ぜ、一口飲んで喉を潤した。
「あの、変なことを言っちゃったなら、すみません…」
なんとなくそう謝ると、園山さんは「大丈夫ですよ」と言ってくれたけど、長い睫毛は伏せられたままだった。
「あっ、それで…このあと、どうしますか?」
園山さんは顔を上げて、なぜか慌てたようにそう言う。
「えーと、そうですね…」
そういえば僕たちは食事が終わってしまったんだ。どうしようかな。そう思って僕は考え込む。
僕は他にも行きたいところはあったけど、園山さんが僕に合わせてばかりでは申し訳ないかなと思って、僕は聞き返してみた。
「園山さんは、どこか行きたいところとか、ないんですか?」
すると園山さんは僕を大きな目で見つめてから、俯いて顎に手を当てて悩んでいたけど、「じゃあ…次は、私の行きたいところでも構いませんか?」と言った。僕はもちろん、「そうしてください」と言う。
「ちょっと遠いんですけど…」
「大丈夫ですよ。じゃあもう行きましょう」
僕達は立ち上がって、バーガー屋を後にした。
作品名:馨の結婚(第一部)(1~18) 作家名:桐生甘太郎