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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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そして僕は園山さんへの憧れを胸に抱いて、幸せな気分で日々を過ごした。


この時期になっても、僕は園山さんをすっかり友達だと信じ込んでいたままだったので、園山さんにある提案をした。



その日も僕達は図書館で、僕の苦手な数学の勉強をしていた。

「ああ…数学、難しいですね~…」

「ふふ、煮詰まってますね」

「はい…」

僕は難しい証明問題を諦めかけてしまって、図書館の端っこにあるテーブルで肘をついている。

園山さんは隣に腰掛けて、労うように優しい目で見てくれる。

なんだか、その微笑みに僕は気持ちが甘えてしまいそうだった。



高校生くらいまでは息抜きに一人で街へ出かけたりもしていたが、近頃はそれも忘れて、僕は一心不乱に勉強をしていた。ふと、「気分転換も大事にしなさい」と言った父の顔を思い出す。



ちょっとだけ遊びに行きたいな。そう思って、隣にいる園山さんの顔色を窺うように、ちら、と彼女を盗み見た。

園山さんは僕の手元にあったノートを見ていたが、僕が首をひねって彼女を見たので、こちらに顔を向ける。

彼女は僕の言葉を待っているようだった。そして、僕の後ろめたいような気持ちは、顔色に表れてしまっていたらしい。

「どうかしましたか?」と、園山さんも不安そうな顔をする。



「あの…勉強が終わったら、遊びに行きませんか?」



僕はそう言った。園山さんは少しびっくりしていたが、また恥ずかしそうに、「いいですよ」と言ってくれた。





「ちょっと準備があるので」と言って、図書館を出た園山さんは、女子トイレに入って行った。準備ってなんだろう?



僕は園山さんがトイレから出て来るのを待っていて、途中からちょっと園山さんの心配をしていた。



もうずいぶん経つのに、まだトイレから出てこない。何かあったんだろうか。それとも、準備に時間が掛かっているのかな?こんなに長い間、何をしているんだろう?

「すみません、遅くなりました!」

園山さんはバタバタとトイレから出てきて、僕にぺこっと頭を下げる。その時僕は、下げられた園山さんの頭を見て、「あれっ?」と思った。そして顔を上げた彼女を見て、僕はすごく驚いた。

「うわあ…!」

思わず声を上げてしまった。