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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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その日から僕たちは、放課が合う日になると二人で大学の図書館に行き、勉強をするようになった。


そして園山さんはある日、僕をとても驚かせた。



「ええっ!?これ全部を覚えてるんですか!?」

僕はある日、そう叫んだ。

それは僕が園山さんに、「苦手分野はないんですか?」と聞いた時のことだ。

彼女は「そうですねえ、数学がやっぱりどうしても解けない時があって…」と歯がゆそうな表情で言葉を切った。

その時僕は、「そうなんですか、同じですね」と言おうとしたけど、彼女は気を取り直したような顔をしてこう言った。

「苦手な問題は、暗記してある同傾向の問題の中からアタリを付けます」と言った。

えっ…?どういうことだ…?

僕は園山さんの言うことがイメージできずに固まっていた。

「ちょうど、今日は数学科目の講義があったので、問題を書き写したノートがありますよ」

そう言って園山さんは黒いシンプルなトートバッグから、三冊のノートを取り出す。

僕はまさかと思ってそのノート達を手に取ってめくったが、三冊ともびっしりと、問題と解答に埋め尽くされていたのだ。

「じゃあ…もしかして、全部暗記しておいて、覚えてある似たような問題の解き方を…記憶から取り出すんですか…!?」

そう言うと園山さんは、「はい、そうすると少しは解けるものも増えるんです。不安なので、書きつけたノートは持ち歩くんですけど」と言って、ちょっと恥ずかしそうに笑った。

なんてことだ!そんな途方もない荒業を、この人はしてきたのか!



それに、園山さんは問題を解くスピードも速く、新しいものを覚えようという知的好奇心がいつも湧き出し続けていて、大学に入ってからも、寝る間を惜しんで勉強をしているらしい。そしてある日、「勉強って、してるだけで楽しいんです」と園山さんは言っていた。

僕にも少しはそういうところがあるから気持ちはわかっても、「しているだけで楽しくて止まらない」なんてことは、僕にはない。


僕は、結果が得られることが嬉しかったのだから。



てっきり勉強量の差だと思っていたものが、その差を生み出しているのは動機の違いだと知って、「勝てるわけがない」とちょっと思いかけた。



でも、僕が難解な設問に苦しんでいると、園山さんが隣で「頑張って!」と言って、自分も一緒に問題を解いているように、懸命に悩んでいるような顔をしてくれたから、僕はいくらでも頑張れた。