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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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翌朝、旅館を出た僕たちは、二人で近くにある滝を見に行った。


「すごーい!凍ってる!」

美鈴さんは滝を見て指を指してから、僕を何度も振り返る。


そこは駅前から出るバスに乗って少しのところで、だんだんと道路は険しい山に飲み込まれ、バス停を降りて展望台のような場所に上ると、目の前に緑に抱えられた大きな滝が現れる、その土地の観光名所だった。

辺りはとても寒く、そこにある荘厳な滝は、確かに全面がぴたりと凍り付いていた。幾筋も通る水の流れが、誰かの命令によって急に眠らされてしまったように白く濁って、じっとり押し黙っている。寒すぎて凍るんだということが頭でわかっていても、本当にそれを見た僕の心には、不思議の念が起こるのだった。

「すごいね…ほんとに凍るんだ…」

僕はびっくりしてそのまま突っ立っていたけど、美鈴さんは滝の手前で手招きして、僕たちは滝を背負うように写真を撮った。

それから僕たちはその眺めを堪能してから、近くにあった土産物屋に入り、美鈴さんはキーホルダーを、僕は一応家人のために最中の詰め合わせを買った。



もう一度予約していた高速バスに途中から乗り、僕たちは物言わぬ人ごみと砕かれた石で作られた街へと帰っていく。道の駅に停まった時に美鈴さんは大きな肉まんを二つ買って食べ、僕は小さめのお弁当を買って食べた。

そうして食後に少し話をする内に、もう終点へと着いてしまった。懐かしい喧騒と、排気ガスが溶けて何かがくすぶっているような空気にどこかほっとしながら、僕たちは荷物を下ろして地下鉄へと移った。

「楽しかったね」

「うん」

僕たちは地下鉄の中で、角にある二つの座席に座っていた。美鈴さんは一番角にある低めの座席の壁に寄りかかっている。


彼女は少しうつむき加減で、髪の毛で顔が隠れてよく見えない。僕がそれを覗き込もうとした時。

「わっ…!」