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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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第三話 遊びに行きませんか?








僕の目の前にはほとんどを食べ終わってしまったカレーライス。そして彼女の前には、同じく食べ終わりかけのAランチがある。

だから僕はこれを早く言わなければいけなかった。

彼女と友達になれたら、多分僕は初めにこう言いたかったんだと思う。


「あの、それで…お願いがあるんですけど…」

食堂のざわつきがなんだか耳にうるさい。僕の声はとても小さくなって、それでも大きな声では言えない気がした。

「なんでしょうか?」

僕の声が小さくてよく聴き取れないからか、彼女は食事を中断したまま、僕を見つめてくれていた。


「あの…勉強、教えてくれないですか…?」


「えっ…?」

彼女はきょとんとして僕を見ている。



僕には、「自分は勉強が上手い方だ」という自負があった。でもそれは、彼女に打ち砕かれてしまいかけている。

だから僕は、彼女と切磋琢磨することで、自分を更に高め、彼女と交流を続けたかった。



「僕、入試でトップを目指してたんです。でもそれはあなただった。だから、あなたから学びたいんです」



そう言って彼女を見つめると、彼女はおどおどと恥ずかしがっていたが、やがて、「いいですよ、私でよければ」と言って、嬉しそうに笑ってくれた。



そして僕たちは、スマートフォンでSNSアプリを立ち上げて膝を突き合わせて、「友だち」登録をした。

彼女の名前は「園山美鈴」さんだった。本当に、鈴のような高くてころころした、綺麗な声だよなあ、と、僕は思っていた。